マスターズ優勝者に贈られる特別な時間

表彰式で前年度優勝者のダスティン・ジョンソンが祝福。オーガスタナショナルのメンバーになった瞬間だ 写真・Getty Images
表彰式で前年度優勝者のダスティン・ジョンソンが祝福。オーガスタナショナルのメンバーになった瞬間だ 写真・Getty Images 【拡大】
 ついに松山英樹がグリーンジャケットに袖を通した。メジャー勝利の中でもマスターズ優勝者は、他にはないセレモニーが体験できる。オーガスタナショナルゴルフクラブは、米国内のプライベートクラブの中でも特別な存在で、メンバーたちはその誇りを持っている。故にチャンピオンは多大な敬意を払って迎えられるのだ。

 クラブハウスでスコアカードを提出したチャンピオンはまず、1964年にメンバーのトーマス・バトラー氏によって建設された「バトラーキャビン」へ案内される。ここでは、オーガスタナショナル会長のフレッド・リドリー氏、CBSテレビのキャスター、ジム・ナンツ氏、CBSテレビの評論家で89、90年の優勝者ニック・ファルドによるインタビューの後、前年度優勝者がグリーンジャケットを着せてくれる。

 実際の部屋はテレビで見るよりもずっと広く、部屋の前ではグリーンジャケットを何枚か持ったクラブオフィシャルが待っている。サイズを決めるためなのだが、

「ほんの数分で決めなければならない」(2007年覇者のザック・ジョンソン)

 と、慌ただしい。

 次は屋外での表彰式だ。パトロンに囲まれた練習グリーンでスピーチ、再び前年度優勝者からグリーンジャケットが贈られ、記念撮影が行われる。

 そして、カートで「プレスビルディング」へ移動。例年は世界中から集まった記者たちが待ち構える中、約30分の会見が行われる。この間にオーガスタナショナルの役員が優勝者の家族をバトラーキャビンへ招く。いくつかのテレビインタビューの後、ようやく家族と静かに勝利を喜べるのだ。

 18年のチャンピオン、パトリック・リードは、

「バトラーキャビンに再び行くと妻と娘が待っていて驚いた。『ダディを誇りに思う』という娘とハグしたのは特別な瞬間だった」

 と、振り返る。

 この後は、オーガスタナショナルのメンバーたちとの晩餐(ばんさん)会が待っている。以前はクラブハウス内のフォーマルダイニングルームで行われていたが、最近は屋外で催されている。

「会場に入るとグリーンジャケットを着た人々がずらりと並んでいて、圧倒された」(リード)

 メンバーがメニューを決めたディナーは、

「シャトー・ラフィット・ロスチャイルドがメンバーのお気に入りで、1万5000ドルのものだった」(04、06、10年優勝のフィル・ミケルソン)

 と、高級ワインも並ぶ。そして、このタイミングで米国の大統領や副大統領などから次々にお祝いの電話が入ってくる。

 今年のセレモニーはコロナ禍で変更も多かっただろうが、松山がじっくりと喜びをかみ締める時間が送れたことを願っている。

文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2021年5月4日号)掲載


武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。

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