
米PGAツアーが6月に再開されて以来、新型コロナウイルスの感染者を出しながらも大きな混乱はなく、対策はうまくいっているといえる。
しかし、ここへきてトップランカーの感染が相次いだ。まずは10月8日から開催されたシュライナーズホスピタル・フォー・チルドレンでは、トニー・フィナウが開幕前に現地で受けた検査で陽性と診断され、10日間の自主隔離となった。
その翌週には世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンがCJ カップの開幕前に陽性となり、さらに次の週のZOZOチャンピオンシップでは、アダム・スコットも感染が確認され、大会を欠場した。
そして、ZOZOチャンピオンシップでツアーに復帰したフィナウが、自身の経験した症状を語ったのだが、その内容は恐ろしいものだった。
「シュライナーズホスピタル・フォー・チルドレンに出発する直前、ちょっと風邪のような症状があったが、移動はユタ州の自宅から車なので、誰にも接触せずに安全だと思った」
現地で受けた検査で感染が判明し、そのままコンドミニアムで隔離措置を取った。
「このまま死んでしまうのではないか、とまでは思わなかったが、このウイルスで亡くなる人がいることはよく理解できる。頭が割れるように痛くなって、全身の筋肉が痛んだ。最初の5日間は本当にひどい状態だった。ボクは31歳とまだ若く、鍛えているし基礎疾患もない。万が一かかっても軽症だと思っていたが、こんなに苦しいとは……」
と、当時の病状について語り、感染経路は結局不明のままだったという。ZOZOチャンピオンシップで復帰したものの、
「まだまだ体は100パーセントではない。マスターズまでになんとか体力を取り戻したい」
と、完治とはいえない状態だ。
現在、CDC(米疾病対策予防センター)のガイドラインでは隔離は10日間に短縮され、発症から10日過ぎていれば、すでに体内のウイルスは死滅し、周囲への感染の可能性はないと判断され、たとえ再検査の結果が陽性でも職場復帰が可能となっている。
米PGAツアーでは、徐々に規制緩和の方向へ進んでいる。バミューダ選手権では一部のスポンサーなどに対してコースでの観戦を許可し、ヒューストンオープンでは一日2000人の観客を動員。開幕前のプロアマ戦も徐々に再開されている。
研究が進んだことで、ツアー再開当初のようには恐れなくてもいいのかもしれないが、フィナウが語るように隔離期間を終えてもすぐに体調が戻るわけではない。どれだけ対策を徹底しても、どこで感染するか分からない状況の中での規制緩和。これまでのように順調に進むことを祈りたい。
文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2020年11月24日号)掲載
武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。
しかし、ここへきてトップランカーの感染が相次いだ。まずは10月8日から開催されたシュライナーズホスピタル・フォー・チルドレンでは、トニー・フィナウが開幕前に現地で受けた検査で陽性と診断され、10日間の自主隔離となった。
その翌週には世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンがCJ カップの開幕前に陽性となり、さらに次の週のZOZOチャンピオンシップでは、アダム・スコットも感染が確認され、大会を欠場した。
そして、ZOZOチャンピオンシップでツアーに復帰したフィナウが、自身の経験した症状を語ったのだが、その内容は恐ろしいものだった。
「シュライナーズホスピタル・フォー・チルドレンに出発する直前、ちょっと風邪のような症状があったが、移動はユタ州の自宅から車なので、誰にも接触せずに安全だと思った」
現地で受けた検査で感染が判明し、そのままコンドミニアムで隔離措置を取った。
「このまま死んでしまうのではないか、とまでは思わなかったが、このウイルスで亡くなる人がいることはよく理解できる。頭が割れるように痛くなって、全身の筋肉が痛んだ。最初の5日間は本当にひどい状態だった。ボクは31歳とまだ若く、鍛えているし基礎疾患もない。万が一かかっても軽症だと思っていたが、こんなに苦しいとは……」
と、当時の病状について語り、感染経路は結局不明のままだったという。ZOZOチャンピオンシップで復帰したものの、
「まだまだ体は100パーセントではない。マスターズまでになんとか体力を取り戻したい」
と、完治とはいえない状態だ。
現在、CDC(米疾病対策予防センター)のガイドラインでは隔離は10日間に短縮され、発症から10日過ぎていれば、すでに体内のウイルスは死滅し、周囲への感染の可能性はないと判断され、たとえ再検査の結果が陽性でも職場復帰が可能となっている。
米PGAツアーでは、徐々に規制緩和の方向へ進んでいる。バミューダ選手権では一部のスポンサーなどに対してコースでの観戦を許可し、ヒューストンオープンでは一日2000人の観客を動員。開幕前のプロアマ戦も徐々に再開されている。
研究が進んだことで、ツアー再開当初のようには恐れなくてもいいのかもしれないが、フィナウが語るように隔離期間を終えてもすぐに体調が戻るわけではない。どれだけ対策を徹底しても、どこで感染するか分からない状況の中での規制緩和。これまでのように順調に進むことを祈りたい。
文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2020年11月24日号)掲載

大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。