圧倒的なパワーで全米オープンを制したデシャンボーがゴルフゲームを変える

ひと回り太くなった腕で優勝カップも軽々と掲げたデシャンボー。難コースをパワーでねじ伏せた 写真・Getty Images
ひと回り太くなった腕で優勝カップも軽々と掲げたデシャンボー。難コースをパワーでねじ伏せた 写真・Getty Images 【拡大】
 ブライソン・デシャンボーが今年の全米オープンを制した。ただ一人のアンダーパー、2位に6打差をつけての優勝に、称賛の声が上がる一方で、その内容については“ゲームチェンジャー”、 “パワーゲームの到来”と、数週間たった今も論争が続いている。

 開催コースのウイングドフットGCは難関コースとして知られる。前回、このコースで開催された2006年大会を制したジェフ・オギルビーの優勝スコアは通算5オーバー。全米ゴルフ協会(USGA)は、今回もイーブン、もしくはオーバーパーを優勝スコアと想定し、コースセッティングを施した。フェアウェイ幅は30ヤード以下に絞られ、ラフの長さは4~6インチと、打ち込めばフェアウェイに出すしかない状況のはずだった。しかし、デシャンボーはそのラフもパワーでねじ伏せた。

 デシャンボーは“ゴルフの科学者”を自称し、データに基づきプレーをすることで知られている。新型コロナウイルス感染の影響でツアーが休止していた間、プロテインとトレーニングで筋肉をつけ、6月にツアーが再開されたときには体重が約10キロ増え、見た目にも大きくなっていた。「飛距離は絶対的に有利な条件」と、データ分析した結果だ。

 米PGAツアーの選手理事の一人、ベテランのチャーリー・ホフマンはいう。

「ブライソンの優勝は、フェアウェイをとらえることよりもグリーンに近づけることが大事だと証明してしまった。ひと昔前とは違って今は、ジムで体を鍛えてヘッドスピードを出す方法を見いだしていく、アスリートがゴルフをするようになった。好みは別として、これが現実となっていくだろう。ボクが育ったゴルフとはもはや違うゲーム。しかし、一方でブライソンたち若者がガンガン飛ばすゲームを見るのはとても面白い」

 約20年前のタイガー・ウッズの出現がゴルフを大きく変えた。それ以前はジョン・デーリーが人気を集め、ファンが飛距離に大きな魅力を感じるのも事実だ。ウッズに憧れてゴルフを始めた選手たちがトップランカーとなり、その多くが平均330ヤード超えのロングヒッターだ。

 8位タイに終わったローリー・マキロイは、

「全米オープンはフェアウェイをとらえ、そこからグリーンを狙うのがセオリー。ブライソンの勝ち方は本来の勝ち方とは違うもので、彼独自の方法。勝利は素晴らしいが、それがゴルフにとっていいことだとは思えない」

 とコメントしたが、自身も平均飛距離は約330ヤードを誇り、筋力トレーニングが過度だと批判されたこともある。

 救いは、デシャンボーはショートゲームの技も冴えていた。飛距離だけで勝ったわけではないことだ。

文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2020年10月20日号)掲載


武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。

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