オーストラリアの若手女子プロ躍進の陰にカリー・ウェブあり

賞金女王時代はクールで近寄り難い雰囲気のあったウェブ。地道で温かい態度で後進の育成を行ってきた 写真・Getty Images
賞金女王時代はクールで近寄り難い雰囲気のあったウェブ。地道で温かい態度で後進の育成を行ってきた 写真・Getty Images 【拡大】
 米LPGAツアーのメジャー第3戦、KPMG全米女子プロゴルフ選手権でハンナ・グリーンがウィニングパットを沈めると、18番グリーンへ飛び出したのは、オーストラリアのレジェンド、カリー・ウェブだった。

 44歳になった今も現役でツアーを戦っているウェブ。一方で母国の女子ゴルフ発展のために“ウェブ奨学金”を設立、グリーンはその卒業生の一人だ。

 ウェブ奨学金は、オーストラリアの女子アマチュアの試合の年間13試合ほどを“ウェブシリーズ”とし、年間を通して上位二人に入ると奨学金を受けられる制度だ。さらに、ウェブが参戦するメジャーの大会に招待され、寝食を共にしながら、練習ラウンドでは共にロープ内を歩き、ウェブがどのようにメジャーを戦うかを目の当たりにできる。グリーンは2015年に招待された。

 ウェブがこの制度を始めたのは08年。今よりシビアにツアーに参戦していた。招待する試合にメジャーの中でも、さらに最高峰の全米女子オープンを選んだことも驚きだ。

「全米女子オープンに招待することに周囲から反対の声もあった。私自身にとってそれがいいのか分からなかったけど、後輩にメジャーでの戦いを見せるなら最高峰の試合がいいに決まっている。そう信じて全米女子オープンに二人を同行させることにした」

 リオデジャネイロオリンピックのオーストラリア代表、ミンジー・リーとスヒョン・オも、ウェブ奨学金を受けて13年の全米女子オープンに同行した。当初「35歳で引退する」と公言していたウェブは、ゴルフがオリンピックの正式種目に決まると出場に意欲を見せたが、その夢を砕いたのは自らが育てたオだった。

 そのころ気持ちに大きな変化があった、とウェブは話す。

「20代のころ、例えば友人の結婚式と試合が重なったら迷わずにゴルフを選んできた。でも、ここ3~4年は人生そのものがゴルフより大事なものになった」

 18年は試合への出場をわずか8試合に減らした。後半から約7カ月も実戦から遠ざかり、母国でコース設計にも携わった。プライベートを楽しむ一方で、

「ゴルフがやりたくて仕方なかった。このまま引退したくないと思った」

 と、今季はツアーに復帰。

 昨年から、開催時期の変更でアマチュア招待がKPMG全米女子プロゴルフ選手権となった。今年もアマチュア二人を含む8人のオーストラリア勢で一軒家を借りて過ごし、ウェブ自身は予選落ちを喫したが、グリーンの優勝を最後まで見守った。

「私のキャリアで最高の一日になった」

 と目に涙をため、誰よりも喜んだウェブ。彼女の取り組みはオーストラリアにとどまらず世界の女子ゴルフの発展につながっている。

文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2019年7月23・30日合併号)掲載


武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。2011年にはその綿密な取材活動をたたえられ、LPGAグローバルメディア賞を受賞している。

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