LPGA放映権問題を外部識者はどう見るか? スポーツジェンダー論の専門家に聞いてみた

小林浩美会長は十分な説明をしてきたといえるのだろうか?
小林浩美会長は十分な説明をしてきたといえるのだろうか? 【拡大】
一昨年来くすぶり続けている日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の放映権問題。今季から日本女子ツアーの放映権はLPGAに帰属することを主張し、主催者、特にテレビ局との関係に不協和音が報じられてきた。今年1月には小林浩美LPGA会長が「大会主催者の皆さまと放映権の考えが合意できた」と宣言するも、その後、民放各社のトップがそれを否定。問題の根深さを感じさせた。
パーゴルフ本誌でも再三この問題を報じてきたが、一方で、この問題はあくまでゴルフ界の中での利権争い、コップの中の嵐ではないのかという思いもあった。果たしてゴルフ界の外からはどう見えているのか? それが知りたくて、スポーツジェンダー論が専門で、スポーツ庁の「スポーツを通じた女性の活躍促進会議」委員を務める山口理恵子・城西大学准教授に話を聞いた。


――LPGAの放映権に関する一連の流れを見てどう感じられましたか?

もちろん事の真相は部外者にはまったく分からないんですけれども、倉本(昌弘)PGA会長が発言されている記事を読んで納得した部分があります。今(LPGAに)スポンサーがたくさんいらっしゃる状況で、今こそ勝負をかけるときだと踏み込んだというようなことをおっしゃっていましたよね。なるほどそういうことかと思いました。ただやり方がまずかったというのかな。交渉がうまくいかなかったわけですよね。話し合えば良かったのが、その形跡もあまり見られないと。

――なぜ、まずいやり方になってしまったのでしょう?

そうですね。やり方がまずいというのは、 それがまずいということが分かる人が周りにいなかったんじゃないかと思うんです。それはなぜかというと、きっと同質集団すぎるんですよ。今までの私たち(スポーツジェンダー論)のアプローチとしては、男性が役員の大半を占める団体に女性を入れましょう、よそ者を入れましょうということで、そうすれば風通しが良くなりますよ、問題解決能力が向上しますよと、そういうスタンスなんです。でも、(LPGAの場合は)逆の意味での同質集団なんですよ。

――つまり、男性が主体であろうが女性が主体であろうが、多様性のない組織というのは頑なになってしまいがちだと?

まさにそうだと思います。我々は女性の役員をいかに増やすかということを主にやっているわけですけれども、ただ多様性を担保していくための一つの突破口が女性というだけのことなんです。女性というカテゴリーが、マイノリティの中ではメジャーな存在であるというだけで、まずそこを突破しない限り多様性なんて生まれてこないというのが私の持論なんですね。LPGAの場合、例えばそこに会社役員の方だったり、男性だったりが入ってくると、そのやり方まずいでしょうとか、それじゃあ世間は……とか、ストッパーになったり折衷案を出してくれたりということが多分出てくるはずなんですけど、今までの流れを見てみると小林さんのトップダウンでひたすら進んでいる印象がありますよね。だからある種、寄せ付けなさ過ぎたというか、役員や理事に外部の人をあまり入れてこなかったことが招いた結果なのかなという気はします。

――最近スポーツの団体に関して、不祥事が相次いだり色々と問題が報じられていますよね。そこはやっぱり同質性の高さが要因として大きいんでしょうか?

そうですね。同質性が高いと、やっぱり問題をなあなあに済ませたりとか、前例踏襲にこだわったり、非常に変化に乏しい集団になりがちです。そうなると、不測の事態が起こった時の対応力が弱いといった問題も起きてきます。同質性の高い集団については、スポーツに限らずいろんな業界において問題点が言われてますよね。特にスポーツの世界でそういう問題が次々に出てきてしまったというのは、スポーツ界が一般の社会から隔絶されすぎているということが露呈しているんじゃないかと思います。それってスポーツの世界では許されているけれども一般の社会に照らしたらおかしいでしょ、というようなことにすごく疎い人が多い。体罰の問題もそうですし、団体の会計の問題もそうでしょう。色んなことに自由な意見が言えるような組織でないと変わることはできないですし、そもそも物が言えない理事会っていうのはあり得ないですよね。もちろん内情は分からないですが、LPGA に関しても今までの流れを見てみると、そういう雰囲気があるんじゃないかという印象を受けてしまいます。

――LPGAが目指すもの自体は、女子プロゴルフというものをもっとコンテンツそのものとして純粋に商品力のあるものに高めたいという、スポンサー頼みじゃなくてもツアーが成立する形にしたいという、非常に前向きなことなんだと思います。

確かに今はプロアマが目的のスポンサー企業も多いと思いますが、そういう人たちをもっと味方につければすごい力になりますよね。それをうまく使って自分たちのやりたいこともやりながらテレビでも放映してもらうというような器用なやり方が本当はできたのかもしれない。私はこの話を聞いた時に、小林会長は今の女子ゴルフの見られ方を変えたいのかなと思ったんですよ。私たちはこういう形でやっていきますと。スポンサーの言いなりにはなりませんとまでは言わないけれども、ゴルフをスポーツに戻すんだみたいな意気込みがあるのかなと思ったんですけれども。

――消費されないために自分たちの足で立とうということなんじゃないかと?

私もこの改革についてはそちらが強いと思いたい。だから、自分たちで主導権を握りたいのかなというのがあります。そうあってほしい。男性の場合なら素晴らしいリーダーシップだといわれることが必ずしも女性の場合そう取られない。だからすごく遠慮してものを言わざるを得ないということもあるかもしれません。小林会長が十分な説明をしていないといわれてしまうのも、もしかしたら揚げ足を取られてきた歴史もあるのかもしれない。でも本当に女子プロツアーや女性のゴルフを振興したいという気持ちがあるなら、もう少し世間を味方につけるようなコミュニケーションを取ったほうがいいですよね。


年間の試合数・動員数ではとうの昔に男子ツアーを凌駕し、スター選手も次々に生まれるなど、現在のLPGAは日本で最も成功している女子のプロスポーツ団体と言っても過言ではない。そんな中でも現状に甘えず、未来におけるツアーの持続可能性を見据えた改革に乗り出したことは歓迎すべきことだ。米国の男女ツアーのように協会側が主催権、放映権を持ち、統一の取れた運営、活性化策を主導、推進していくという方向性については、我々メディアも含めた利害関係者がほぼ理想的な形態と認め、賛同しているように思う。
しかし、米国と違い、各トーナメントをそれぞれの主催者・テレビ局がコンテンツとして育ててきた歴史的経緯を踏まえない強引な手法、運営に関わる膨大な手間やコスト、リスクをこれからLPGAが背負えるのか? それだけの体力、ノウハウがあるのか? という懸念、リスクを負担せずにおいしいところだけ持っていくつもりなのでは? という疑念、それらこの問題にまつわる諸々についての情報開示の乏しさなどが、LPGAの味方を少なくしているように思う。
男子ツアーも成し得なかった理想に向けて舵を切った女子ツアー。インターネットでの生中継など、本当はファン・視聴者にとってもメリットのある改革であるはずだ。しかし、それがLPGA対主催者・放送局という利害関係者同士の利権争いに矮小化されて見える状況は残念でならない。LPGAにはファンが改革を後押ししたくなるような情報開示やコミュニケーション、主催者・放送局とウィンウィンの関係が構築できるような、一方的でない交渉を求めたい。

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