革新を遂げ、伝統も守るマスターズ 独自の“パトロン”ルールはどうなる?

コースにいながらも他のホールで起こったことは、後に録画で知ることになる。このドキドキ感が味わえるのは今やマスターズだけといっていい 写真・岩本芳弘
コースにいながらも他のホールで起こったことは、後に録画で知ることになる。このドキドキ感が味わえるのは今やマスターズだけといっていい 写真・岩本芳弘 【拡大】
 今年で82回を数えたマスターズだが、昨今は最新のデジタル技術を駆使している。残念ながら英語版のみだが、スマートフォンのアプリによるライブ速報も充実して、ホームページでも全選手のプレーを弾道解析つきで見ることができる。

 しかし、その一方でコース内では独自の伝統が今も守られている。

 米PGAツアーの他のトーナメントと大きく異なるのは、コース内への携帯電話の持ち込みが一切禁止されていることだろう。観戦する“パトロン”もメディアも例外なく、コースへの持ち込みが見つかったら即刻退場。そして2度と戻ることができない厳しいルールが敷かれている。

 他のメジャー3大会を含み通常の試合では、携帯電話の持ち込みは許可されているどころか、試合中でさえシャッター音をオフにすれば写真や動画の撮影が可能だ。さらに、無料Wi-Fiサービスを設置するなど、その画像をギャラリーたちがSNSで発信することをむしろ積極的に推奨している。

 しかし、マスターズは携帯電話の持ち込み禁止のルールを徹底している。パトロンたちは各ホールにあるリーダーボードから試合の動向を知ることしかできない。リーダーボードは今でも手動で、上位の選手のスコアのみが表示されている。グリーン上の選手のプレーの妨げにならないよう、絶妙なタイミングで数字が加えられていく。

 最終日、上位陣がバックナインに入るころ、コースのあちこちでは目の前の選手の一打に大歓声が沸き起こる。そして、ボードのスコアが入れ替わるたびに、どよめきが聞こえる。少し前まではトーナメントで当たり前だったことが、今やこの響きこそがマスターズ独特の空気をつくっているともいえる。

 ちなみに独自のルールは他にもある。コース内で走ってはいけない。キャップを後ろ向きにかぶるのはNG。ヒジかけがついているイスを持ち込んではダメ、座るエリアに立ったり、立つエリアに座ることも禁止されている。そして、マーシャルが“お静かに”のサインを挙げないのはマスターズだけ。「ゴルフをよく知るパトロンには必要がない」のだそう。

「携帯電話に邪魔されないのはありがたいが、ツアーで写真を撮られることにも慣れたし、ファンはマナーモードにするなどルールを守っているから、まったく気にならない」

 とローリー・マキロイが話すように、選手は携帯電話の持ち込みに慣れてきたようではある。

 オーガスタナショナルGCの前会長、ビリー・ペイン氏は在任中、

「私が会長である限りは、このポリシーは変えない。未来のことは次の会長が決めればいい」

 と語っていた。“伝統”はいつまで続くのだろう。

文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2018年5月22日号)掲載


武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。2011年にはその綿密な取材活動をたたえられ、LPGAグローバルメディア賞を受賞している。

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