短期集中連載「素顔の宮里藍」最終回

5月26日、今シーズン限りでの引退を発表した宮里藍。その後、米女子ツアーに復帰し、いつものように「全力で」残り試合に臨んでいる。過去にパーゴルフPLUSで“今週の藍ちゃん”というコーナーを持ち、宮里藍と懇意にしているジャーナリストの武川玲子が、フィナーレまでの期間、“藍ちゃん”の知られざる素顔を公開していく。

最終回 指先

最後の試合となったエビアン選手権(9月14~17日・フランス・エビアン)から2カ月近くが過ぎた2017年11月初旬、引退した宮里藍に沖縄で再会した。彼女の軌跡を一冊の本に残すため、最後のインタビューをすることになった。引退後、人前に出るのはほぼ初めてだという。

早朝の集合だったけれど、元気いっぱいの笑顔で現れた。いつもと変わらないのかな? と思ってみていたが、どこか大きなプレッシャーから解き放たれた柔らかな表情だった。

ふと気づいたのは指先だった。ここ何年間はずっときれいにネイルで飾られていたのだが、すっかりそれを落としてナチュラルの地爪になっていた。

尋ねてみると、

「今は人前でサインをすることもないから指先も見られない。だから爪も少し休ませようと思って」

といった。これまではツアーで訪れる土地をイメージしたカラー、例えばフランスならトリコロールにするなど爪を飾ることを楽しんでいるのだと思っていたが、思えば「戦い」における武装の意味が強かったのかもしれない。

「引退してみて、これまでの14年間はすごいプレッシャーの中で生きていたんだなと、しみじみと感じています」

もちろん試合の中での重圧が最も大きいのだろうが、きっとゴルフ以外のプレッシャーがあったに違いない。

まだ米女子ツアーでルーキーだったころ、「わたし、“良い子”っていわれるのがイヤなんです」と聞かされたことがある。

「私はフツーにしているのに“良い子”だっていわれると、そうしなければダメなんだというプレッシャーを感じてしまうんです」

それでも長い米女子ツアー生活を送る中で、やはり彼女はいつも誠実だったと思う。何に対しても、誰に対しても。だから自分では普通と思うことが、周囲からは良い子と見えるのだろう。

キャリアの後半には“宮里キッズ”と呼ばれる若い選手が続々と登場し、日本女子ツアーで活躍した。宮里が米女子ツアーで勝利し、世界一に輝くのを見て育った選手たちばかり。宮里がたまに日本女子ツアーに参戦すると“神様”のように慕い、練習ラウンドをお願いされる機会も一気に増えた。後輩の面倒も一生懸命にみる宮里だが、実は少し戸惑いもあった。

「すごくうれしいですよ。どうぞどうぞ、という感じでやっているけれど、その結果、自分のことを自分のペースでできなくなった。ノーとはいえなかったんで、なんとなくよそいきになってしまったし、もっとちゃんとしなきゃってと思ってやっていたのか、分からないですけど……」

多くの選手が宮里に相談もした。

「米国に興味がある子がいれば、こういうことがあるよっていえるけれど、実際は経験するのが一番。でも、私も結構真面目だから、聞かれたことに対して100パーセント答えるから、自分もエネルギーを使ってしまった」

こんなふうに誠実に向き合うのが彼女の本質であり、無理こそしていないけれど頑張ってしまう。その結果、たくさんのことを背負って大きな重圧となっていたのだ。

「わたしだって人の悪口はいうし、本当はフツーの子なんです」

と、エビアン選手権で笑っていたのが忘れられない。鎧を脱いだ宮里、第2の人生はもっと自然体になる、沖縄で会った彼女の顔をみていると強くそう感じた。

彼女が米女子ツアーを目指した2005年秋の予選会から2017年最後の試合、エビアン選手権までを見続けることができ、私自身もたくさんのことを学び、本当に幸せだったと思う。涙あり、笑いあり、時には怒ることもあった米女子ツアーでの12年間、振り返ればきらきらと輝いた時間だった。

長い間、本当にお疲れさまでした。ゆっくり休んで、そしてまたあの笑顔に会えることを心より楽しみにしています。宮里藍さん、ありがとうございました。

文/武川玲子
柔らかい表情とネイルのない指先。あきらかに宮里藍は変化を遂げた 写真・村上航
柔らかい表情とネイルのない指先。あきらかに宮里藍は変化を遂げた 写真・村上航 【拡大】

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