短期集中連載「素顔の宮里藍」4

5月26日、今シーズン限りでの引退を発表した宮里藍。その後、米女子ツアーに復帰し、いつものように「全力で」残り試合に臨んでいる。過去にパーゴルフPLUSで“今週の藍ちゃん”というコーナーを持ち、宮里藍と懇意にしているジャーナリストの武川玲子が、フィナーレまでの期間、“藍ちゃん”の知られざる素顔を公開していく。

4 誰しもが通る道

前回は宮里藍がスランプから脱出する“きっかけ”となった1打について話した。では、宮里藍はなぜスランプに陥ってしまったのだろうか?

米女子ツアーを目指す日本人選手、いや世界中の選手に起こりえる大きな落とし穴かもしれないので、今、再検証をしておきたい。

2006年、ルーキーとしてさっそうと米女子ツアーに本格参戦し、初優勝こそ逃したもののメジャーのマクドナルド全米女子プロ選手権で3位に入るなど、トップテンは7回。ルーキーイヤーは決して悪い成績ではなかった。

そして2年目の2007年、シーズン途中でスイング改造を行っていた、それが前回お伝えした“シャットフェースを直そうとした”点だった。

後に宮里が述懐している。

「大きな改造をするという意識は、まったくなかった。それでもシーズンの途中でやるべきことじゃなかった、と今なら思えるけれど……」

誰しもが世界の頂点をとるために、もっとうまくなりたい、もっと強くなりたいと思う。ショットの精度や飛距離など、もう一つ上のランクを目指して努力していくのは当然のことだ。

宮里にとって、米女子ツアーでの課題はフェードを打つことだった。持ち玉のドローでは、どうしても攻めきれないピンポジションが出てきた。「これが世界最高峰の舞台なんだ」。もちろん、飛距離だってもっとあるほうがいい。

スイングコーチの父・優さんはメジャー大会ごとに米国を訪れていたが、夏前から一つの修正ポイントとして「シャットフェースを直す作業」を挙げ、コツコツと始めた。ところが、かなかしっくりとこない。ひたすら上を目指して地道に努力を続けるしかなかったが……。

「私はお父さんに3つくらいのポイントをいわれても、すぐに1回でできる子だったんです(笑)。だから、このときも“ここを直せ”っていわれて、自動的に“分かった”と答えた。だけど、そこにはすごく大きなリスクがあるものだと、父も私も分からなかったんだと思う」

おかしくなったショットに不安を持った宮里は、全米女子オープンで10位に入ったあと報道陣に隠れて一時緊急帰国。父と再調整を行い参戦したマッチプレーで2位に入り、状況は好転しているように思えた。しかし、宮里のフィーリングはやっぱりおかしかった。

「バックスイングを上げた際、腰のあたりの感触がしっくりこないんですよ。全英女子オープン(現・全英リコー女子オープン)のときに17番で2発もOBを打ったときなんかは、ここ(バックスイングの9時の位置)が気持ち悪くてしょうがない。だから、“気持ち悪いっ!”って思ったまま打って、ミスしてしまいました」

この全英以降、出口の見えない迷路に入っていく。「シーズン中の改造」をクローズアップしてきたが、オフシーズンにトライしていても同じことが起こりえたことかもしれない。

前回お伝えしたよう1打のきっかけから、「自分のフィーリングを大事にしたスイング」を求めて立ち直っていく。結局、初優勝まで2年近い時間を要したが、その結果、強い宮里藍が誕生するわけだから、振り返れば彼女に必要な経験だったのかもしれない。

繰り返しになるが改造が悪いわけではない。誰でも入り込む迷路に対し、紆余(うよ)曲折を乗り越えて脱出する精神力が必要なのだ。これから世界を目指す選手たちには、大きな教訓としてぜひ知っておいてほしいと思う。

文/武川玲子
世界の頂点を目指す選手なら誰もが「ぶつかる壁」。それを宮里藍は見事に乗り越えた 写真・村上航
世界の頂点を目指す選手なら誰もが「ぶつかる壁」。それを宮里藍は見事に乗り越えた 写真・村上航 【拡大】

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