宮里藍の米ツアー初優勝のカギは、ドライバーよりもむしろパターだった

この大会では2011年にも優勝、苦戦していたグリーンも好調の宮里には、もはや関係なかった 写真・村上航
この大会では2011年にも優勝、苦戦していたグリーンも好調の宮里には、もはや関係なかった 写真・村上航 【拡大】
「勝つ準備は80パーセントできている」

 米ツアーに主戦場を移した翌年の2007年、ドライバーのスランプに陥った宮里藍だが、09年にはようやく安定し、むしろ飛距離も伸びて戦える状態に戻ってきた。

 そして7月、フランスで開催されたエビアンマスターズで、ソフィー・グスタフソンをプレーオフで下し、ツアー初優勝を遂げる。

 実はこのころ、宮里は新たな課題をもってパッティングに取り組んでいた。

 きっかけは前年の全米オープンを、移動中の空港のテレビで見たことだ。開催コースのトーリーパインズGCのグリーンはポアナでよく跳ねることで知られている。優勝したタイガー・ウッズがプレーオフ入りを決めた18番ホールのロングパットは、ボコボコと跳ねながらもクリーンな転がりでカップに沈んだ。

「あのタイガーのパットを見て、どんなグリーンでもピュアなストロークでピュアな転がりをすれば入る。入れにいってはいけないんだと、よく分かりました」

 エビアンマスターズGC(現エビアンリゾートGC)はレマン湖のほとりに展開する。どことなく故郷・沖縄の海を彷彿(ほうふつ)させるロケーションは気に入っていたが、グリーンはコーライ芝、山の斜面ということもあってレマン湖に芝目が向いている。ラインは蛇行するのが当たり前で、毎年苦戦を強いられていた。

 ウッズのパッティングで新しいテーマを見つけて以来、ストロークに集中することに取り組んでいた宮里は、この週、ある練習法を取り入れていた。それは“ビジョン54”のドリル、“目を閉じてパッティングをする”だ。

「私は本能でプレーするタイプ。目を閉じるとボールの当たる感触やストロークのリズムがすごくクリアに分かるんです」

 毎日、目を閉じて距離感を出す練習をひたすら続けた。

 プレーオフ1ホール目、18番パー5でバンカーからの3打目を1メートルにつけた。

「最後のパットは手が震えていたけど、しっかりストロークすることだけ考えました」

 ラインに乗って真っすぐ転がったバーディパットは、ストンとカップに消えていった。

「もちろん、苦しいときも応援してくれる人たちに感謝しながらプレーしていましたが、こんなにたくさんの人が私の初優勝を待っていてくれたんだ、とあらためて実感しました。皆さんに恩返しをするために、ゴルフだけでなく人間性でも人を引きつけられるように、身につけなければいけないことがたくさんあります」

 少し遠回りをしたが、この初優勝が宮里にとってのターニングポイントであったことは間違いない。この日を境に、小さな宮里がとても頼もしく見えるようになった――。

文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2017年7月4日号)掲載


武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。2011年にはその綿密な取材活動をたたえられ、LPGAグローバルメディア賞を受賞している。

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