アーメンコーナーでチャンスをフイにしたスピース、同伴競技者に恵まれ、優勝を手にしたウィレット

ジョーダン・スピースの連覇はならず、伏兵ともいえるダニー・ウィレットがグリーンジャケットに袖を通した
ジョーダン・スピースの連覇はならず、伏兵ともいえるダニー・ウィレットがグリーンジャケットに袖を通した 【拡大】
 今年のマスターズは誰もが驚く幕切れだった。

 世界中のゴルフファンの期待は、新世代のリーダーたち、ジョーダン・スピース、ロリー・マキロイ、ジェイソン・デイらの争いだと、早いうちから熱を帯びていた。

 中でも大本命は連覇の懸かるスピースだ。開幕前日、ドライバーのフェースにひびが入り心配されたが、夜までに新しいドライバーが用意された。今は以前と違って、同じ性能、性質のクラブがすぐに入手でき、感覚的ななじみの問題はあるが大きな不安材料ではない。

 今年は風が大きなファクターだった。特に昼から午後にかけて南寄りのしたたかな風が選手を苦しめた。風の強い難コンディションの中で全体的にスコアが伸びず混戦となった。スピースは初日のまだ風が強くないうちにプレーする幸運が、好ダッシュの助けになった。

 一方、ライバルのマキロイは初日最終組。その点恵まれなかったともいえるが、天候による影響はゴルフにはつきものだ。スピースは何回も1打差まで追い詰められはしたが、一度もリーダーの座を譲らずに最終日を迎えた。

 前半を終え2位と5打差。この時点では誰もスピースの勝利を疑わなかっただろう。スピースは12番、レイズクリーク越えのパー3にやって来た。距離は短いがコースの南東部の隅にあるホールは常に風が渦を巻いていてボールが翻弄(ほんろう)され、とんでもない距離と方向へ運ばれる。「打った後は神に祈るしかない」、文字どおりアーメンコーナーだ。

 スピースの8番アイアンのショットは手前の土手に跳ねクリークに落ちた。3打目も水の犠牲、5打目がグリーン奥のバンカー、やっと7で上がった。グリーンの奥行きは10ヤード、最終日は右寄りの手前からギリギリが伝統的なピン位置。6回優勝のジャック・ニクラスさえ「絶対にピンではなくセンターを狙う」という。スピースも知っているはずなのだが、魔が差したというほかないだろう。

 4組前のダニー・ウィレットは突如首位に立ったことを知るが、それまでのペースを乱さず、ボギーなしの67で勝利をつかんだ。

 ウィレットはこれまでヨーロピアンツアーで4勝、今年2月のオメガドバイデザートクラシックも勝利している。

 20年前、グレッグ・ノーマンを逆転したニック・ファルド以来のイングランド出身チャンピオン。最終日一緒に回ったのが、やはりイングランド出身のリー・ウエストウッドだったのもラッキーといえる。ウエストウッドは紳士的で若い選手の面倒見もいい。ウィレットも回りやすかったのではないか。

 奈落の底に落とされたスピースだが、また一歩一歩前進し、さらに上をいく選手になってほしい。6月の全米オープンをはじめ、これからの試合に注目しよう。

文・岩田禎夫
※週刊パーゴルフ(2016年5月10・17日号)掲載

岩田禎夫(いわた・さだお) 1933年神奈川県出まれ。報知新聞社で活躍後、70年にフリーのゴルフ記者に転向し、世界のゴルフを取材中。

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