98年の全英オープンに出場した、当時17歳のジャスティン・ローズ
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ローズがプロ転向したのは17歳のとき。98年、ロイヤルバークデールで開催された全英オープンに、アマチュアで出場して4位に入った翌日だった。だが、華やかだったアマチュア時代に比べてプロ生活は順風満帆といかず、21試合連続で予選落ちを続けた。17歳でのプロ転向は早すぎたと批判を浴びることにもなった。しかも、矢面に立ったのはローズ本人ではなく、父のケンだった。
自分への批判なら理解できる。つらすぎた。だからこそローズはもがき、欧州ツアーのシードを得るために予選会に挑戦し、ようやく南アフリカで開催された02年のダンヒル選手権で初勝利を挙げたものの、すでに父は闘病中。そして、その年に父は他界した。
「父と過ごした時間は短かったけれど、でも時間の長さじゃない。中身の問題だと思っている。ボクは父と一緒に毎日練習場に通って過ごした思い出を持っていることを、とても幸運に思っている」(ローズ)
そのローズも、今では二人の子供を持つ父になった。
「子供たちに誇れる戦いをしたと思う。フィル(ミケルソン)は父親としてすべきことを見せてくれた」
と、大会直前に娘の卒業式に出席して戻ってきたミケルソンの健闘もたたえた。
17歳のプロ転向が早すぎたのかは誰にも分からない。しかし、15年後にローズは見事にメジャーチャンピオンへ輝いた。プロの若年化が議論になる昨今だが、その流れは止められないだろう。日本でも石川遼が16歳でプロになり、今はPGAツアーに挑戦して、必死にもがいている。むしろ若くて将来性のある選手に、結果を早計に臨むことのほうが問題ではないか。そのスピードの違いこそあれ、石川にもメジャーを制するチャンスは十分にあることを示したローズの優勝だった。
文・武川玲子