朝から時おり雨の降る肌寒いコンディションの中迎えた富士通レディース最終日。難しいピン位置にスコアを崩す選手が続出する中、5アンダー・67とただ1人60台でプレーし、スコアを伸ばしたルーキー・成田美寿々が、ツアー初優勝を飾った。今年も盛り上がった富士通レディースの総評を、大会ゼネラルプロデューサーの戸張捷氏に聞いた。
実は2日目のラウンド終了後、パッティンググリーンで練習する成田美寿々に、「明日、いくつで回れば優勝できますかね」と聞かれ、「今、トップと5打差だけど、トップの穴井詩は優勝経験がないし、明日のピンの位置を考えるとスコアが大幅に伸びるとは考えにくい。優勝スコアは9アンダーか10アンダーになると思うから、もし6アンダーでラウンドできれば優勝できるんじゃないかな」と答えました。
ですから、そのスコアを目標に最終日のスタートを迎えたという成田美寿々が、5アンダーでラウンドして通算9アンダーで優勝を決めたということは、私の読みどおりコースセッティングがうまくいったということもあり、面白い試合展開だったなと思いました。 首位でスタートした穴井詩、猛追した成田美寿々。どちらが勝っても初優勝です。そのプレッシャーの中で、どちらが結果を出すのか……。穴井詩はティショットの安定感がなかったことが一番の敗因でした。スタートの1番パー5から右にプッシュアウトしたように、「耐えたパーが続いたので苦しかった」と話していたとおりの18ホールとなってしまいました。
一方の成田美寿々は、多くのホールでフェアウェイをキープできたことが好スコアにつながったといえます。今年の富士通レディースは例年に比べてラフが深く、ラフに入れてしまうと難易度がグッと増しました。ティショットを曲げて2打目をラフから打つことが多かった穴井詩と、フェアウェイから打つことができた成田美寿々。これこそが明暗を分けました。
初優勝を遂げた成田美寿々は、今週の月曜日に20歳になったばかり。日本体育大学に在学中ながら、昨年末に行われた今季の出場権をかけたQTで26位となり、大学を休学してツアーに参戦しています。4年後のリオデジャネイロ五輪に日本代表選手として出場したいという、高い目標を持っていると話していました。4年後に、日本でナンバーワンになっていなければオリンピックには出場できない。そのために今、何をしなければいけないか、ということを考えながら今季の優勝を目指していたそうです。 富士通レディースまでの賞金ランキングで、日米ツアー共催のミズノクラシックへの出場権が確定します。前週までの賞金ランキングが55位だった彼女にとって、この優勝で来季の出場権が獲得しただけでなく、米女子ツアーへの足がかりもできたのです。これも、彼女が優勝を目指す大きなモチベーションになりました。
身長167センチ、体重60キロと体格に恵まれ、飛距離も出る成田美寿々。この優勝を糧に、これからも自分自身を育てることで成長してほしいと思います。