ほけんの窓口レディース
今季初Vのイ ボミ、亡き父との約束を果たすための一歩
優勝への強い思いで今季初の勝利をつかんだイ ボミ ほけんの窓口レディース(2015)(最終日) 写真・鈴木祥
ほけんの窓口レディース(5月15日~17日、福岡県・福岡CC和白C、6375ヤード、パー72)
スマイルキャンディの愛称で親しまれるイ ボミが、ようやく真の笑顔を見せた。
最終ラウンドを1打差の2位で出たイは、6バーディ、ノーボギーの66で回り、大会レコード更新となる通算10アンダーとして、2位に4打差をつけて今季初優勝、大会連覇を達成した。
今大会は賞金ランキング1位で迎えたが、ツアー史上初の4週連続2位になるなど、あと一歩のところで優勝を逃してきた。
「今年は優勝できないのかなと思っていました」
昨年まで日本で8勝を挙げているイでも、優勝の難しさを感じていた。それでも「いい経験になっている」と前向きな気持ちでディフェンディンチャンピオンの大会に乗り込んだ。そして、首位と1打差の2位と絶好の位置で最終日を迎えた。
「先週、(優勝した)チョン・インジさんは、自信を持って楽しさを感じてプレーしていたのを見て勉強しました。私はいつも、心配ごとをしていました。今日は、前の試合とは違い、“優勝したい”と思ってプレーしました」
イの心配とは、優勝したあとのインタビューのことや、応援してくれるファンにいいプレーを見せないといけないと思うこと。そのため、プレーに集中できていなかったという。先週の経験を生かして優勝を意識して臨んだこの日は、「ショットもパットも調子がよく、100パーセント力を出せました」と自画自賛の内容だった。
2番(パー3)で3メートルのパーパットを沈めると、3番(パー4)で4メートル、4番(パー5)で50センチを沈めてバーディを奪って首位に浮上。その後もチャンスにつけるとバーディを奪い、パーオンを逃してもきっちりパーセーブをし、後続にスキを見せなかった。
ウイニングパットを沈めると、思わず涙が溢れた。昨年9月に最愛の父・ソクチュさんが他界してからの初優勝だった。
「今まではお父さんのために頑張ろうと思うと、悲しい気持ちになって集中できていなかったのですが、先週から悲しい気持ちではなく、笑って、頑張ろうと思えるようになったのです」
4週連続2位になっているころは、父のことを思って優勝争いのときにスマイルが少なかったのだが、この日はスマイルキャンディの名にふさわしい笑顔で、父に捧げる優勝をつかんだ。
「昨年は父が亡くなる前に、賞金女王のチャンスだから頑張ってと言われていたのですが、それができなくて悔しい気持ちが強かったです。今年こそは約束を守りたいです。これから何勝できるかになってくると思います。今日勝てたので自信を持ってやりたいです」
2位の呪縛から解き放たれて笑顔を取り戻し、1年遅れで父との約束を果たすことを誓った。
文・小高拓