好スコアの起爆剤となったピンパター1-Aを手にする岡村咲 スタジオアリス女子オープン(2015)(2日目)
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そして極めつけはPING(ピン)「1-A」のパターを使用していたこと。これは1959年にPINGの創業者であるカーステン・ソルハイムが考案した独特のデザインのパター。
「徳島県にある練習場の倉庫にあったパターを父が譲ってもらったんです。パター対決していたら中々勝てないんで、『これ使わせて』ってお願いして使っています」
打つと「ピーン」という金属音が鳴り響くため、メーカー名が「PING」になったという逸話があるほど。この音が今日はグリーン上で何度も響いていた。そうした新しいクラブとの出会いが、岡村に刺激を与えた。
そして二つ目。岡村が乗りこえなければならない壁が、今でも続く持病の食物アレルギーだ。
今季はマスクをつけてプレーする姿が見られるが、単なる花粉症という理由だけではない。数多くの食事制限を余儀なくされ、ツアー生活を過ごしているのだ。
というのも、昨シーズンの検査で重度のアレルギー体質であることが判明し、小麦粉、卵、乳製品など、あらゆる食品を食べてはいけないと医師に診断された。治療しながら、体調管理も続けなければならない中でのシーズンだった。それは今シーズンに入っても変わりはなかった。
「今年のオフは治療でほとんど練習できませんでしたし、3カ月で5ラウンドくらいです。食事も自炊が主ですが、食べていいものが少ないので、すごく大変です。体重もすぐに減るので体調管理にも気を配らないといけない。今年初めにはバームクーヘンを食べたら、呼吸困難になって、気がついたら8時間くらいベッドに寝込んでいたこともあったりして……。一人暮らしだったので、気をつけなければならないことがたくさんあります」
医師には「ゴルフをやめるべきだ」と通告されたというが、プロゴルファーとしてツアーで戦いたいという気持ちを抑えることはできなかったという。
「今は東京でレーザー治療しながら、体調を整えているので、そこまで戦えない体ということではありません。それに他の病気でもっと苦しんでいる人がいるのに、私のような体だからといって、諦めることはできません。自分が頑張って少しでも多くの人に元気を与えられるのであれば、それはそれでうれしいです」
今季はQTランキング47位でフル参戦とまではいかないが、レギュラーツアーの優先出場権を持つ。自身の開幕戦となったヨコハマタイヤPRGRレディス、Tポイントレディス、アクサレディスin MIYAZAKIは予選落ち。先週のヤマハレディースオープン葛城でようやく予選を通過し47位タイに入った。
そんな中で訪れた初優勝のチャンス。トップの藤田光里とは3打差で、逆転優勝のチャンスは十分だ。最終日、最終組は初の経験となるが、
「緊張してしまうかもしれないですけれど、とにかく自分のゴルフをすれば結果はついてくると信じています」
と前を向いた。
そして岡村に与えた3つ目の試練。それが明日の最終日と言っては少し大げさだろうか。「ピーン」と打つパターの音が最終ホールの18番で大歓声とともに耳に入ってくる瞬間をしっかりと見届けたい。
文・キム ミョンウ