日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯
鈴木愛 たくさん練習して“トッププロ”になりたい!
キャディの高見さんと息の合ったコンビでツアー優勝をメジャーで達成した鈴木愛 日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯(2014)(最終日) 写真・佐々木啓
日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(9月11~14日、兵庫県・美奈木GC、6645ヤード、パー72)
「本当に2打差あるんですよね」
18番パー4のファーストパットの前に、鈴木愛はキャディの高見明弥さんに確認した。
「2パットで大丈夫だから、ファーストパットはタッチを合わせるだけでいいよ」
高見さんは、鈴木にそう声をかけたという。
1年前に上がり3ホールで4つスコアを崩し、トップ合格を逃した悔しい思い出のコースへリベンジを誓ってスタートした今大会が、記録づくしの初優勝になるとは、鈴木自身も夢にも思わなかった。
「まだ優勝の実感はありません。ウイニングパットを決めたときも“長い1日だったなぁ”という感じです」
と、ウイニングパットを沈めて溢れる涙をぬぐったときの心境を語った。
「今日、11番パー5の3打目を打った後、キャディさんに“あと二つ伸ばそうよ”と言われました。昨年のプロテストのときのスコアが6アンダーだったので、“(そのスコアに)負けたくないから、絶対伸ばして勝つ”と断言しました」
1番パー5、2番パー4で連続バーディ、5番でボギーをたたいたものの、6番ですぐ取り返し、さらに7番でもバーディ。9番パー4でボギーをたたいたが、前半9ホールで二つスコアを伸ばした。
「ボギーの後にすぐバーディが来てくれたので、焦りはありませんでしたね。今日の優勝争いのプレッシャーより、昨日の(2、3番の)連続ダブルボギーのほうがプレッシャーはありました(笑)」(高見さん)
鈴木が焦らなかったのは理由がある。メジャーの大舞台で首位に立ったことで急に注目されはじめ、そのプレッシャーが影響し3日目はスタート前から浮き足立っていた。その反省も踏まえ、高見さんから言われたことがある。
「昨日、たくさん話をしたときに、自分が優勝カップを握って立っているところを想像してプレーしなさい、といわれました。今日はスタートして二つバーディが来たので、緊張はなくなりました。」(鈴木)
パーをキープし続けていた後半、16番パー5で先にボギーが来ても17番パー4で取り返している。
「17番でバーディパットを打つ前にスコアボードを見て、ここでバーディを取ったら最後ラクにいけるなと思って、絶対入れよう! と思いました」
1年前の自分に負けないことだけを誓ったゴルフ。想像もしていなかった大舞台での初優勝へとつながったのだ。
「(この優勝で)重みというよりプレッシャーになると思うし、今回はすごく運がよかったけど、まだそこまでの実力はない。たくさん練習してみなさんに“トッププロ”と認めてもらえすように頑張ります」
この言葉にも理由がある。現在、鈴木はピンと用品使用契約を結んでいる。ピンといえば、先週優勝の大山志保、現在故障中だが開幕早々2勝を挙げた一ノ瀬優希、そして米女子ツアーに挑戦中の上原彩子と、契約選手の顔ぶれには実力者がそろっている。開幕前にそのフィッティングに訪れた米国カリフォルニア州カールスバッドにあるピン本社で、ツアー担当者が鈴木にアドバイスをした。
「トッププロといわれる選手たちに比べると練習量が足りない。来シーズンもうQTを受けたくないなら、もっと練習しないと」
鈴木はその言葉を真正面から受け止め、練習日でも遅くまで練習をしている姿がたびたび目撃されている。
「目標は申ジエさん。ボギーを打ってもダボを打ってもニコニコしていられるのは本当にスゴイ。私もそうなりたい」
“小さいころお父さんに怒られても納得できないと謝らない、頑固な子供でした”というが、さまざまな人との出会いとアドバイスを生かし、大輪の花を咲かせた鈴木。大きなタイトルとの出会いを、これからの成長にどのようにつなげ、真のトッププロへと成長していくのだろうか。
文・武井真子