スタジオアリス女子オープン
リ エスドが最終日最終組13回目にして悲願の初V
最終18番でバーディを奪い初優勝! うれしさを爆発させたリ エスド スタジオアリス女子オープン(2014)(最終日) 写真・佐々木啓
スタジオアリス女子オープン(4月11~13日、兵庫県・花屋敷GCよかわC、6376ヤード、パー72)
リ エスドが日本ツアー参戦8年目にして、悲願の初優勝を飾った。
「うれしくて、うれしくて、この喜びをどう表現していいかわからないくらいです」
そう言って、最終日の戦いを振り返った。
最終日、最終組はリとO.サタヤの一騎打ちとなった。
トップのサタヤは9アンダー、一方のリは2打差の7アンダーからのスタートとなった。リは出だしの1番(パー4)からバーディ発進すると、6番(パー4)でもバーディを奪って、勝負を振り出しに戻した。
だが、サタヤも負けてはいない。後半に入ってサタヤが10番(パー5)でバーディを奪って1打リード。12番(パー3)は互いにボギーとしたが、13番(パー4)でリがバーディを奪って、再びスコアで並んだ。
続く14番(パー4)で、サタヤがボギーでスコアを落として、ここでリが逆転。だが、リは17番(パー4)でボギーを叩いてしまい、サタヤと8アンダーで並んだ。
「17番でエスドさんがボギーを打って、まだチャンスはあると思いました」
一方のリは17番でボギーを叩いたときの心境をこう話す。
「17番のボギーのあと、今まで土壇場で優勝を逃したことを思い出しました。でもそういう場面の時、キャディの妹(リ・チソン)が『ケンチャナ!』(日本語で大丈夫の意味)という言葉をいつもかけてくれるので、心を落ち着かせることができました。夢にもこの言葉が出てくるくらいです(笑)」
勝負となる最終18番(パー4)。
サタヤはセカンドショットをピン右につけ、6メートルのバーディパットを外してパーセーブ。一方のリはピンまで残り173ヤードのところ、セカンドを6番アイアンで打つと、ピン左ヨコの6メートルにつけた。
バーディトライは難しい下りのスライスライン。
「あまり難しく考えずにスッと打ちました。自分の中ではすごくスローに見えました。入った瞬間は正直、信じられなかったです」
通算9アンダーで接戦をものにしたリ。20歳のときに来日し、ツアー参戦して8年目にして初優勝を手にした。
実はリが最終日最終組になったのは、これで13回目。未勝利ながら最終日最終組を最も多く経験している選手で、これまで何度も悔し涙を飲んできた。それでもいつか優勝できると願い続けた。
「もう優勝できないんじゃないかって考えていたら、今回も優勝することはできなかったと思います。一つ一つの試合に集中していこうと前向きになって試合に挑んでいました。『悔しい』っていう思いも言い訳になるので、負けずにがんばろうって……」
今年のオフはタイで合宿したが、今までトレーニング重視だった練習を方向転換し、技術向上にあてた。ショートゲームに磨きをかけ、アプローチとパッティングを集中的に練習した。
「指導してくれるコーチのポイントが試合でも耳に聞こえるくらいに練習したので、それがスコアにつながったと思います」
苦労の末、手にした優勝。実は8年前のリの本名はイ・ジヒョン(李知炫)だった。だが、日本参戦2年目に
「もっと日本人にも覚えてもらえる名前にしよう」
と思い名前を「リ エスド」に変えた。敬虔なクリスチャンである彼女は、旧約聖書に登場する人物「ESTHER(エスダー)」のスペルを自分の名前にあてたという。
取材はすべて日本語で受け答えするほど上達した。それほど日本に長くいることの証で、日本文化や日本食が好きなった。
「しゃぶしゃぶとすき焼きは大好物でよく食べます。料理が好きで、漬物をよくつけるんです。たくあんやぬか漬けもよくしますよ。地方で開催されるトーナメントでは、宮崎では地鶏、香川ではうどんなど地元の名産を好んで食べに行きます」
それくらい日本が大好きになった。優勝した瞬間、リに涙はなかったがその理由を聞くと、
「もし優勝したらうれしいことだから、涙を流すのはおかしいって妹と話していたんです。もちろんうれし涙もあると思うのですが、それ以上にうれしいという気持ちが大きかったです」
土壇場で負け癖がついていたリが、接戦をものにし、勝ち切った初優勝の経験は大きい。最後にリは、
「いつも感謝の気持ちを持ち続ける、強い選手になりたい」
と言った。勝利への欲は尽きていない。
文・キム ミョンウ