マンシングウェアレディース東海クラシック
横峯さくら 勝利の神様がほほ笑んだ14番のセカンドショット
優勝の瞬間、空に向かい何度もこぶしを突き上げた横峯さくら マンシングウェアレディース東海クラシック(2013)(最終日) 写真・村上航
最終18番パー4でウイニングパットを沈めた瞬間、横峯さくらは空に向かって右こぶしを何度も突き上げた。その表情には、5月のサイバーエージェントレディスで2年ぶりのツアー優勝を飾ったときのように涙がこぼれることもなく、満面の笑みが浮かんでいた。
「正直ホッとしています。最後の最後までどうなるか分かりませんでしたから」
前半のハーフを終え、横峯のリードは4打。優勝を争っていた藤本麻子はツアー1勝で、菊地絵理香はツアー未勝利。ツアー19勝を飾っている横峯にしてみれば、それほど脅威を感じる相手ではなかったはずだ。しかし、このとき妙な緊張感が横峯を襲っていた。
「いくら4打差あるとはいえ、相手がバーディ、自分がボギーなら2打差縮まる」
悪い予感にかぎって当たるものだが、横峯も例外ではなかった。前半一度もラフに入れていなかったティショットが10番パー4で初めてラフにつかまる。2打目の距離感が合わずにこの日初めてのボギーをたたくと、12番パー5でもボギーとした。この2ホールで菊地がバーディを奪ったため、ついに13アンダーで並ばれた。
「ああ、どうしてボギーをたたいたんだろうと思いましたが、まだ並ばれただけで逆転されてはいないんだと気持ちを切り替えました」
と横峯。13番パー4で再び単独首位に立つバーディを奪ったものの、負のスパイラルは完全には収まらず、14番パー4ではティショットを大きく右に曲げた。暫定球を用意した横峯だが、なんとボールがギャラリー(少女)の腹部の上で止まるという奇跡。ゴルフ規則19―1.aにより、ボールをドロップした横峯はそこから2打目をグリーン手前のラフまでもっていき、3メートルのパーパット。このとき初めて自分が緊張していることに気がついたというが、冷静にその事実を受け入れた結果、逆に緊張がほぐれ、そのパットを沈めた。それ以降は最後まで安定したゴルフを見せた横峯。ついに、プロ通算20勝と一つの区切りをつけた。
「30勝までは無理だと思いますけど、これからも目の前の1勝に対して貪欲にいきたいと思います」
賞金女王レースでもランキング2位にまで浮上したが、まだ首位の森田理香子とは2000万円以上ある。それでもスイングの状態がいいだけに、残りの試合で充実したプレーをしたいと気持ちを新たにしていた。
文・山西英希