アース・モンダミンカップ
引退も考えた辻村明須香が語る、ロングパットの極意とは?
一時は引退も脳裏によぎったという辻村明須香 アース・モンダミンカップ(2013)(1日目) 写真・佐々木啓
昨年、辻村明須香の脳裏に引退の2文字が何度もよぎったという。2003年にプロテスト合格を果たして以来、ひたすらツアーで活躍することを目標に頑張ってきたが、10年目を終えた時点でシード権を一度も獲得することができなかったことが大きかった。
「若いときならまだ頑張ろうという気になれますが、年も年だし、疲れますからね」
まだ30歳の辻村だが、ツアーの若年化に拍車がかかる中で、心が折れかかったとしても仕方がないだろう。第二の人生を考えるなら、早めのほうがいいかもしれないという思いもあった。さらに、親友の赤堀奈々が、昨年限りで引退を決めていた。つい自分もという気持ちになりかけたが、QTを11位で通過したのが契機となった。今頑張らないと、第2の人生もうまくいかないだろうと思い直し、もう一度自分に活を入れた辻村。ただ、開幕戦のダイキンオーキッドレディスこそ12位タイでフィニッシュしたものの、その後はなかなか結果が出ない。試行錯誤しながら臨んだのが今大会だった。
「特にパットの調子が悪かったので、急きょ奈々ちゃんに見てもらうことにしたんです。今週の月、水曜日にそれぞれ2時間、練習グリーン上でレッスンしてもらいました」
その中で、自分なりに取り入れようと思ったことがいくつかあった。特に参考になったのが、ロングパットを打つときの心構えだ。
「今までは打ち出しのラインを気にしていましたが、カップの1メートル手前のラインを気にするようにいわれたんです。そのままボールまでラインを引っ張ってきたほうが、カップに寄るんですよね」
その効果が早速表れたのが12番(パー4)。25メートルのスライスラインを1発で決めてバーディを奪った。さらに、18番(パー5)ではカラーから10メートルの距離を沈めてバーディ。これもフェースをかぶせずに打ったほうが芝にヘッドが食われることなく、距離感やラインを出しやすいという赤堀のアドバイスが効いたのだ。ホールアウト後は、赤堀と喜び合った辻村。この恩返しは優勝の二文字しかない。
文・山西英希