マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント
片岡大育が2位タイの成績以上に手にした大きな収穫とは?
2位タイに入り、海外挑戦への手応えをつかんだ片岡大育 マイナビABCチャンピオンシップ(2015)(最終日) 写真・佐々木啓
マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント(10月29日~11月1日、兵庫県・ABCGC、7130ヤード、パー71)
「試合前は20点ぐらいのスイングでしたが、最終日にはなんとか70~80点ぐらいまで点数が上がったと思います」
ホールアウト後、片岡大育がうれしそうな表情で語った。11月14~19日にスペインのPGAカタルニアリゾートで開催される欧州ツアーのファイナルクオリファイングステージへ向け、急ピッチで行なわれていたスイング改造。しかし、あせる気持ちとは裏腹に、目指すスイングに近づかない。
寝た状態で下りてきたクラブを少しでも縦振りにしようと、練習場で連日遅くまでクラブを振り続けた。3日目終了後の練習では、これ以上ボールを打っても悩むだけだと開き直ったほどだ。しかし、思わぬヒントが最終日に転がり込んできた。
「6番パー4でセカンドショットを打ったぐらいから、ひょっとしたらと思い始め、7番パー4のセカンドで確信しました」
片岡の確信とは、ダウンスイングの際、右肩が下がっていることだ。縦にクラブを振ろうとするあまりの弊害だが、もちろん、目で見て分かるレベルではない。片岡自身の中にある微妙な誤差だ。しかし、トッププロにとっては大きな違いになる。右肩が下がらないように背骨を軸にしてクラブを振るとボールはイメージどおりに飛んでいき、フィニッシュで心地いい余韻が残った。
「まだスイングをビデオに撮って確認していないので分かりませんが、これかなという感触はあります。欧州ツアーに向けてギリギリ間に合ったという感じです」
10番パー4で3パットのボギーを叩いたものの、この日は6つのバーディを奪い、5アンダーをマーク。前日の6位タイから2位タイにまで順位を上げた。
しかし、ショット以上にすごかったのが、17番パー4での3打目だ。フェアウエーバンカーからグリーン右のラフに打ち込んだが、バンカー越えの難しいアプローチが残った。ピンまで約20ヤードだが、手前のグリーンエッジからピンまで4ヤードしかない。片岡自身もボギーを覚悟したが、クラブフェースを思い切り開き、インパクト後に自分にフェース面を向けるように打つと、ボールは高く上がってピンの手前に落ち、そのまま止まりパーセーブ。
「18番パー5が残っていただけに、あそこでボギーはどうしても打ちたくありませんでした。おそらく、何十回に1回の成功率のショットだと思います」
それを土壇場で打てるだけの精神面の強さがあるのが、片岡のすごさだろう。光明が見えたスイングに、ここ一番での勝負強さとテクニック。本当の意味で欧州ツアーファイナルQSへの準備は整った。
文・山西英希