ANAオープンゴルフトーナメント
宮本勝昌、兄弟子を思い浮かべたメンタルコントロールでVつかむ
兄弟子・藤田寛之(左)とともに勝利を喜ぶ宮本勝昌 ANAオープン(2014)(最終日) 写真・鈴木祥
ANAオープン(9月18~21日、北海道・札幌GC輪厚C、7063ヤード、パー72)
混戦のバーディ合戦となったANAオープン最終ラウンドは、通算18アンダーで並んだ宮本勝昌と谷原秀人のプレーオフへ。1ホール目に3オンした谷原に対して宮本がバーディを沈めて大きなガッツポーズを見せ、4年ぶり通算9勝目を挙げた。
前日は3~5メートルのパットに苦しんだが、「今日はフィーリングが合っていた」と、1番(パー4)で4メートル、4番(パー4)で3メートルのバーディパットを沈め、混戦をリードする。6番でボギーとすると、7番から3連続バーディで2位に2打差をつけて単独首位に立った。
「バーディ先行でしたが、手綱を緩めず、藤田(寛之)さんを思い出して、昨日と同じ精神状態でやったつもりです。2打差で抜けた段階で、後半もミスせず気持ちを切らさないようにやったつもりですが、12番でミスして混戦になっちゃいました」
結果に対して一喜一憂しない精神状態を心がけた。しかし、バーディが欲しい12番(パー5)で、ミスを重ねてボギーとし、逆にバーディを奪った谷原に並ばれたそして14番(パー4)で谷原がバーディを奪って1打ビハインド。
「なんとか、18番で追いつければいいと思っていました」
無謀な攻めをして自滅する選手も少なくないが、宮本は冷静だった。16番(パー3)で谷原がティショットを1・5メートルにつけてバーディとしたが、宮本も8メートルのバーディパットを沈めて離されない。17番(パー5)は、宮本がバーディを奪って並び、プレーオフに持ち込んだ。
グリーンサイドには芹澤信雄を師匠とする「チーム・セリザワ」の3歳年上の兄弟子、藤田寛之が見守る。大会2日目を終えて宮本は、藤田が今季のアールズエバラスティングKBCオーガスタで優勝を挙げて涙を流したシーンを見られなかったため、「今週は僕が勝って、藤田寛之を泣かせますよ」と豪語していた。プレーオフ1ホール目、3オンの谷原に対して、7メートルのスライスラインを読み切ると、藤田は手放しで喜んだ。宮本が優勝インタビューを受ける姿を嬉しそうにスマートフォンで写真を撮っていたが、グリーンを離れたところで藤田の目には涙が浮かんだ。
宮本がプロ入りした1995年から芹澤の元、苦楽をともにしてきた。ライバルであると同時に互いに刺激し合う存在。デビュー当初は同じような成績がつづいたが、40歳を過ぎて11勝を挙げる藤田に対して、宮本はここ3年未勝利。賞金ランキングも44位、35位、46位と苦しんだ。スイングに悩み、藤田に相談することも少なくなかった。その苦しみを知っているからこその涙である。
宮本自身、決して練習量は少なくなく、むしろ多い方だ。練習量ではその上をいく藤田が結果を出す姿には、一目置いている。
「藤田さんは飛距離アップや強くなるために、常に貪欲に考えて練習しています。刺激は受けていますし、僕もそれを見習わないといけないんですけどね。やっぱり練習の大切さをあらためて感じました。まあ、毎年勝てる選手なんてなかなかいないですよね。……そういうことをいっちゃいけないんですね。そこに入ろうとしないといけないんですね。僕は藤田さんに比べて優勝への貪欲さが薄いんですよね。大きな目標を持たないので、来週予選を通過して優勝争いできるゴルフをしたいです」
前日まで今大会の“2つの夢”と語っていたCAの記念撮影、来年のANA機内での大会ダイジェストに優勝者として出ることを達成した。“ANAオープンならではの夢”と“藤田寛之を泣かせる”という、優勝以外の目的が、優勝に貪欲ではない宮本に勝利を呼び込んだのかもしれない。
40歳台での初優勝を飾った宮本。「ポテンシャルは僕より上」と羨む藤田の背中を追って、まだまだ優勝を積み上げる。
文・小高拓
