片山晋呉が、経験を生かして単独首位に立った。
最終組で同組だった松山英樹が、イーグルをはじめ前半を4アンダーでターンしたのに対し、片山は二つスコアを落とした。一時、松山とは7打差まで広がったが、
「差は考えていませんでした。このまま(松山が)伸ばすことはない思っていたので、自分の中では冷静にやっていました」
と、松山が和合のワナにハマることを想定し、決して焦ることなく戦ったという。
「あれは効くよね」
片山が得意気に話したのは、14番のこと。松山がティショットでOBを打ちながら、意地で7メートルのダブルボギーパットをねじ込んだ直後、片山は6メートルのバーディパットを沈めた。この時点で松山2アンダー、片山イーブンパーと2打差に迫った。
「やったらやり返すのが楽しくて、そういうのが好き。やれていることが幸せ」
何とか耐えた松山に対して、追いかける片山がバーディを奪ってプレッシャーをかけた。ジワジワと追い込む、常勝時代の片山らしさが見えた。
14番を境に松山はボギーを重ね、片山は18番パー4で「練習でも入らない距離」という、小さいグリーンの和合ではあまりない20メートルのバーディパットを沈めた。終わってみれば、通算1アンダーで単独首位に立った。
今大会で2回優勝を遂げており陰に隠れているが、難攻不落の和合で14回出場して予選落ちなしという素晴らしい記録の持ち主。いわば戦い方を熟知しているわけで、この3日間のパーオン率は44.44パーセント(47位タイ)と、トップ10の選手の中で唯一50パーセントを割っているのに対し、パーキープ率は85.19パーセントで1位だ。
「わざとグリーンを外すこともある」
と、技術だけでなく戦術眼を含めた経験が片山を支える。
この大会、最終日最終組は2戦中2勝。相性の良さに加えて14番でプロとしての喜びを得たことで、燃え尽き症候群から完全に脱しただけではなく、片山のハートに完全に火がついた。5年ぶりに強い片山が見られそうだ。
文・小高拓、写真・村上航