【GOLF、今この人に聞きたい!】 第141回:種田芳郎さん

 冒頭で紹介したとおり、種田さんは休みの日はほとんどコースで過ごしているというゴルフ猛者。ゴルフのどこにそれほど魅力を感じるのか。

 「まずは何よりも開放感ですね。明るくて広い場所にいられることです」

 眼科医は照明を落とした暗い診察室で、さらにライトを落として眼底を診る。そして患者との距離も非常に近く作業場所は狭い。しかし、ゴルフ場に行けば青空があり、山が見え、場所によっては海も見える。春になれば桜が咲き、秋になれば紅葉が美しい。とにかく開放感のある場所で景色を満喫したいというのは眼科医という仕事の反動なのかもしれない、と種田さんはいう。

 「もう一つ面白いのはね、ゴルフには不思議なところが一つあるんです。山崎さんはボールを打った後、次打地点に行く間に何考えてます?」

 えっ、そんなこと急に聞かれても……。えーと、何考えてますかね、ちょっと手が早かったな、などとミスの原因を考えたり、うまくいったときは次のショットどうしようと考えたり……。そんなところでしょうか。

 「そうですよね、でも本当にショットのことばかり考えてます?ショット以外の時間ってどれくらいありますか?」

 アドレスの時間も入れて1打秒30秒としよう。80打で回れば40分、100打で回っても50分が、純粋にショットだけに費やしている時間。

 18ホール回るのに4時間強かかるとすると、ショット以外の時間が200分(3時間20分)もある計算になる。実に8割以上だ。確かに、それだけの長い時間ゴルフのことだけを考えているとは思えない。

 「そうでしょ? 私も正直何を考えていたのか思い出せません。でも、それがいいんですよ。仲間と話すのも楽しいし、仕事のことや家族のこと、自分の人生のこと、いろんなことを心に思い浮かんだままにつれづれ考えているんだと思うんです」

 ボールを打ってスコアを追いかけるのが楽しいのはもちろんだが、残りの8割以上の時間も、実はゴルフの魅力なのだ。

 種田さんは相模原に眼科医院を開業して26年になる。開業当時から仕事関係の仲間とゴルフコンペ「種田眼科杯」を主催し、開催回数は優に50回を超える。最近少し寂しさを感じていることは、若い人たちの参加が減っている点だ。

 「僕がまだ医局にいた20代、30代のころは、先輩のいうことが絶対でしたから、コンペに誘われれば、ハイ以外の返事はありませんでした。でも最近は週末のコンペに誘うと、それは義務ですか、なんていわれちゃうみたいで(笑)」

 私は「先輩・上司のいうことは絶対」と「週末はプライベートの時間」という二つの考え方のちょうどはざまにいる年代だから、どちらの言い分もよく分かる。個人的にはどちらかといえば後者の考え方が強いが、それでも半ば無理やり誘われて始めたことが、実は非常に面白かった経験はたくさんある。

 「私がゴルフを始めたのも、先輩に誘ってもらったことがきっかけでした。ゴルフが下手でも、先述のとおりゴルフ以外の時間のほうが長いですから、新しい出会いなどいろんなことがあるわけです。ワークライフバランスも重要ですけど、そのおかげでもしかするとチャンスを逃している、ということもあるのかもしれないですね」

 ゴルフをする若い人たちが減っている理由は、彼らの考え方の変化と同時に、無理やり誘って嫌われたくない、好きかどうかも分からないことにお金と時間を使わせるのが申し訳ないなど、上司・先輩が自信を失っていることも理由の一つなのだろう。しかし、せっかく楽しいスポーツに誘っているのに断るなんてもったいない! と思うくらいでちょうどいいのかもしれない。そもそも嫌われる原因は、たいていそれ以前の問題なのである。憶することなく、もっと積極的に後輩たちをゴルフに誘ってみようではないか。


種田芳郎さん(たねだ・よしろう)
1952年生まれ。79年北里大学医学部を卒業し北里大学病院眼科に勤務。92年に神奈川県相模原市にて種田眼科医院を開業、現在は同医院にて精力的に臨床に当たるほか、北里大学の臨時講師としても後進の指導に尽力している。医学書、教科書、参考書の著書も多く、日本眼科医会常任理事、神奈川県眼科医会会長を歴任し、現在は神奈川県眼科医会顧問を務める。ホームコースは相模原GCで、一時はハンディキャップ7に。

クラブにこだわりがなくてよかった⁉ と思った事件 冒頭に紹介したとおり、種田さんの書斎には歴代の“相棒”たちがズラリと並ぶ。話題のモデルは行きつけのゴルフショップで、ついつい手にしてしまうという。そんな種田さんは5年ほど前、車上荒らしに遭ったことがある。

 「ステーションワゴンの後部ガラスを割られて積んだままにしていたバッグを盗まれました」
 半年後に犯人は捕まったものの愛用のクラブは戻ってこなかった。

 「もちろんとても悔しいですが、全部ショップですぐに手に入るモデル。2度と入手できない限定品や希少品じゃなくてよかったです」

 好き嫌いなく新モデルにトライする気持ちが、ますます強まった出来事だ。

(写真は眼科医仲間とのラウンドで。右から二人目が種田さん)


週刊パーゴルフ(2019年2月26日号)掲載 / 写真・鈴木健夫

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