【GOLF、今この人に聞きたい!】 第138回:北野 大さん

 沖縄での定宿は「琉球温泉瀬長島ホテル」。那覇空港から南西に位置する瀬長島にある。島といっても本島と橋でつながっており、空港から車で10分ほどの距離。ここは天然温泉が湧き出ていて、温泉だけ立ち寄りで利用する地元の人も多い。

 「このホテルは最高ですね。早起きしてビーチを歩くと本当に幸せな気分になります。沖縄の海は世界屈指の青さだといわれますよね。沖縄で一番好きなのは海です」

 もう一つ沖縄の好きな点は「人」。15年ほど前に、オープンして間もない美ら海水族館を訪れたときのこと。自動車運転免許を持っていない北野さんはバスで水族館に向かった。現在は毎日30便以上が往復しているが、当時はまだ本数が少なかった。行きは時間を調べておいたためスムーズに乗れたものの、予定していた帰りのバスに乗り遅れて、バス停で立ちすくんでいた。

 「そうしたらね、何してるんだって声を掛けてくれた人がいてね。地元の人だったんだけど、何と那覇まで車で送ってくれたんですよ。いやぁ、こんなことがあるのかって、感動しましたね。知らない人を車に乗せるなんて、他のところじゃあり得ないですよ、こんなこと」

 エージシュートはいつでもできる。ただしハーフに限る。大好きだけど、全然上手にならない――北野さんのゴルフをひと言でいうと、こうだ。

 「マレーシアだったと思うんだけど、5番アイアンで打ったボールがものすごく高く上がっちゃって、飛距離も全然出ていない。おかしいなと思ってクラブを見たらSって刻印してある。5とSを見間違えちゃったんですよ(笑)」

 さすがに長さもロフトも違うから構えたときに気づいてもよさそうなものだが、と私がツッコミを入れると、レンタルクラブだったから分からなかった、と大笑いする。

 そもそもゴルフは不公平にできている。上手な人は平らなところから打つが、下手な人ほど傾斜地や草むらから打つため、ますますスコアが悪くなる。始めたころはスコアを「〇△◎」でつけられることを目標にしていたが、すぐに諦めた。

 「他にも、2グリーンのコースで違うグリーン目がけて打ったりなんてことはしょっちゅう。だいたい僕は昔から運動神経ゼロだったから。武(弟のビートたけしさん)は野球やってたし、運動神経がよかったからね。武とゴルフに行ったことは一度もないですよ。ボロ負けするの分かっているし、ネタにされるに決まってますから(笑)」

 そんな北野さんにとってゴルフの魅力は会話ができること。ゴルフはおしゃべりしながらプレーできる唯一のスポーツ。19番ホールもお酒を飲みながら、またおしゃべりを楽しむ。決して上手でなくても、車を持っていなくてもゴルフ友達が多いのは、とにかく話が面白いからなのだ。

 「私のゴルフ友達も相当面白いですよ、例えば亡くなった輪島さんね」

 以前はよく元横綱の故・輪島大士さん、元プロ野球選手の田淵幸一さん、司会者の関口宏さんとラウンドしていた。アスリートの輪島さんと田淵さんはいつも真剣勝負だったという。実力的には田淵さんのほうが少し上で、ときどき輪島さんが勝つこともあるという感じ。プレースタイルも正反対。輪島さんは練習嫌いだが、田淵さんとのラウンドの日は闘志むき出しに朝早くから練習していた。田淵さんはパワーもあるが緻密なゴルフが特長。キャディさんの距離の間違いを正確に指摘できるほどだという。そんなある日、輪島さんの自宅に遊びに行くと、田淵さんに勝った日のスコアが額装されて飾られていた。

 「びっくりしましたね。コースの中でも真剣にやり合っていましたけど、ここまでするとは。勝負の世界で一流になった人は、勝負に対する気合の入れ方がわれわれとはこうも違うんですね」

 学長を務める秋草学園短期大学は、北野さんが長年研究を続けてきた専門の環境化学とは、異なる分野の学生たちが学ぶ。ピアノ、歌、工作、お遊戯、読み聞かせ、寝かしつけ……。自分の子どもが保育園に通っていたころには深く考えたことがなかったが、あらためて幼稚園教諭や保育士が習得すべき技能が多岐にわたることが分かる。「忙しい親の代わりに子どもの面倒を見てくれる人たち」としてではなく、公的資格を持つ専門職として、もっと敬意を持って接しなければならないのだ。そんな尊い志を持った若者たちを北野さんは全力で見守っている。


北野 大さん(きたの・まさる)
1942年生まれ、東京都出身。工学博士。明治大学工学部卒業後、東京都立大学大学院工学研究科工業化学専攻博士課程修了、分析化学で博士号を取得。専門は環境化学。淑徳大学、明治大学などで教授を歴任、2017年4月より秋草学園短期大学学長を務めている。経済産業省・化学物質審議会委員、環境省・中央環境審議会委員、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約専門委員などを歴任した。

環境の専門家としては日本のゴルフ場はキレイすぎ⁉ 環境化学の専門家として政府の機関などで委員を歴任してきた北野さん。ゴルフ場というと昔から環境問題が取りざたされてきたが……。

 「ゴルフが好きだというと、環境問題の専門家なのに、といわれることもありました。ゴルフ場でダフると“土を掘るなんて!”と冗談をいわれたり。 かつては散布される農薬が問題視されていましたが、今は環境に優しいものに改良されています。ただ、日本人の性質にもよるのでしょうが、日本のゴルフ場はきちんと整えすぎかもしれないな、とも思いますね。全英オープンの中継などを見ると、ありのままの自然のコースもいいかもしれませんね」

 写真は文中に登場した沖縄県の南山CC


週刊パーゴルフ(2019年2月5日号)掲載 / 写真・鈴木健夫

スペシャル最新記事一覧

Pargolf Members

すでに会員の方はこちら

最新トピックス


アクセスランキング

ツアー・トーナメント

フォトギャラリー

トーナメントプロ公式サイト・ブログ