【GOLF、今この人に聞きたい!】 第128回:マグナス・ハンソンさん

 諸外国と比べ、日本人は他者に対する思いやりが深い。多くの人は相手が何をしてほしいかを常に気遣い、たとえ相手が言葉に出さなくても期待に応えられるよう振る舞う傾向にある。

 「日本に来てから外国人である私に深い思いやりを持って接してくれていることを強く感じました。おそらくプロゴルファーも外国人である私と同じくらい、あるいはそれ以上に気遣われ、もてはやされていることでしょう。それに慣れきっている選手が多いのではないでしょうか」

 ところが、選手が海外に行っても日本ほどもてはやされることはない。この時点で、まず受け入れてもらえていないと感じてしまうのではないか。ここは私の意見であるが、現地の人からすれば日本人だから扱いを変えているというわけではなく、普通に振る舞っているつもりである。日本人は相手がおもんぱかって先回りして行動してくれることが多々あるが、欧米では自分の口で要求しなければ何も出てこない。さらに要求が通らない場合は、はっきり〝NO〞と答える。現地の人からすれば、それはできない、という事実を述べているにすぎないが、〝難しいです〞〝今はちょっと〞などの答え方に見られるように、はっきり〝NO〞といわれることに慣れていない日本人は、自分自身が否定された気持ちになってしまいがちだ。そういうものだと理解していればまったく気にならないが、このような違いを認識していないと、外国人は冷たいという印象を持ってしまうものである。

 「またロッカールームで新参者に口汚い言葉を発するなど、メディアに見せるそれとは違う顔を見せる選手もいます。それに萎縮してしまった時点で、もう負けです。ゴルフのプレー以外の部分で勝負がついてしまっているのですね」

 では、日本で生まれ育った選手が海外の大きな大会で実績を出すには、どうしたらいいのだろうか。

 「早いうちから海外で生活する選手が増えると違った結果が出ると思います。個人的な意見ですが、テニスの錦織圭選手が14歳で米国に渡っていなかったら、今の地位に上り詰めることはなかったと思います」

 最近の若手選手では、松山英樹選手、畑岡奈紗選手ら、海外の試合で優勝できるレベルの選手が育ってきているが、これもジュニアのころから頻繁に国際試合で世界中を飛び回る経験を積んでいることが要因だろう。食べ物などの環境に順応し、日本人以外の人の考え方を理解し、臆することなくコミュニケーションができる若手選手は、ずいぶん増えている。今の主力は日本を基盤として海外での経験を積んだ選手の中の、とりわけ卓越した技術を持つ若手である。海外で活躍する可能性の高い選手層を今よりもずっと厚くしようとするなら、海外を基盤とする選手が今以上に増えてから、ということになるだろう。

 「プロレベルの技量であれば、ゴルフの勝負はまさにメンタルのはずです。だから実力を発揮できるように環境面のマイナスに負けないことが必要だ、と私は思いますね」

 ハンソンさん自身のゴルフはといえば、ラウンドは均すと月一ペース。冬の時季はまったくクラブを握らず、季節のいいときに集中的にコースに出る。

 「仕事関係の方々とのラウンドがほとんどです。ゴルフコースは会議の一形態としても大変魅力的ですから」

 まず何よりゴルフのプレーそのものが実に面白い。それに、かなり長い時間を一緒に過ごすことができ、一台の車で行けばさらにコミュニケーションの時間を増やすことができる。最近では職場の会議や会食でも、ちょっと時間が空くとみんなすぐにスマホをいじりだすものだが、ゴルフコースではスマホの電源はずっとオフのままだ。しかし、ハンソンさんはゴルフを単なるビジネスツールとしてとらえているわけでは、もちろんない。

 「本当はもっとコースに出たいんですけど、週末は時間の許す限り子どもたちと過ごしたいんです。彼らが巣立ったら、思う存分ゴルフをやりますよ!」

 ハンソンさんが話していた、日本人選手が欧米の試合で活躍するための条件について、私も100%同意する。「ツアーのメンバー」という言葉がよく使われるが、それは単に「出場権を持っている」ということにとどまらず、一人の人間として仲間と認められることも含まれる。活躍する日本人選手の層を厚くしようとしたら、球打ち以外の部分の強化が必要だということなのだろう。


マグナス・ハンソンさん(Magnus Hansson)
1974年生まれ、スウェーデン出身。ヨーテボリ大学経済商法学部卒(大学時代に6カ月、大阪の大学に交換留学の経験あり)。同大インターナショナルビジネス修士課程卒業後、サーブ社(スウェーデン)に入社。財務、セールス、アフターセールス、プロダクト開発、マーケテ ィングなど多岐の業務を経験。その後、日産社グローバルアジアパシフィック・プロダクト・プランニング・ディレクター、インフィニティ香港本社グローバルセールス・ゼネラルマネージャーを歴任。2013年11月、ジャガー・ランドローバー・ジャパン株式会社代表取締役社長就任。ゴルフのベストスコアは、海外のゴルフ場で出した73。

霊峰富士に向かって豪快なショット! 海外だけでなく、機会があれば日本においても、ビジネスとプライベートでゴルフを精力的に楽しむハンソンさん。

 写真は、今年の9月に朝霧カントリークラブ(静岡県)でプレーしたときの写真。同CCは富士山の眺望が素晴らしいことで有名なゴルフ場だが、「富士山はとてもビューティフルですね。富士山に向か って豪快なショットを楽しめました」という。


週刊パーゴルフ(2018年11月6日号)掲載 / 写真・鈴木健夫

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