【GOLF、今この人に聞きたい!】 第124回:矢澤一良さん

 もう一つのアスタキサンチンについて。これはサケの身、イクラ、エビ・カニなど甲殻類の殻に含まれている赤色の栄養素。これは高い抗酸化力があることが分かっており、体を疲れにくくする。

 「最後の3ホールでバテてしまう人は、ラウンド前に摂取しておくといいですね。サケの生態を見てみると、アスタキサンチンがどんな働きをするかをイメージしてもらいやすいと思います」

 川で孵化し、稚魚の段階にあるサケの身は赤くない。海に出て2〜3年回遊している間に身が赤くなる。これはアスタキサンチンを作り出す藻を餌にするオキアミをサケが食べているうちにアスタキサンチンを身にため込んでいくからだ。その後、産卵のために何百キロも逆流を泳いで生まれた川を遡る。このとてつもない運動量を支えるために、サケはアスタキサンチンを筋肉にため込む仕組みが備わったのだと考えられている。ちなみに、産卵後のサケの身はアスタキサンチンを使い果たして白く戻る。

 「疲れというのは活性酸素が原因ですが、アスタキサンチンはこれを除去してくれるんです。また魚を養殖するいけすにアスタキサンチンを入れると病気が発生しづらくなることも知られています」

 ではアスタキサンチン6㎎はどう取ったらいいのか? 主な食品1㎏当たりの含有量(㎎)を見ると、イクラが0〜14、サケが3〜40、エビ・カニの殻が30〜8000とある。参考にしていただきたい。

 ところで、われわれがDHAのサプリメントを手軽に入手できるようになったのは、矢澤さんのおかげである。1990年に矢澤さんはマグロの眼球の後ろの脂肪にDHAが多く含まれているのを発見。それはひょんなことがきっかけだった。あるとき、矢澤さんが新聞に書いた魚の腸内細菌の記事を読んだ鮮魚店の店主が突然やって来た。

 「うちのネギトロはウマい。なぜウマいのか調べてくれっていうんです。そんなの知らんわ、って話なんだけど、面白そうだから話を聞きに行ったんです」

 製造現場を訪れると、大量に並んだ大きなマグロの頭から目玉を取り出し、その後ろにある脂身をすき身に混ぜていた。当時マグロの頭は廃棄物であり、同じことをしている鮮魚店は見たことがなかった。そこで材料を分析したところDHAが大量に含まれていることを発見した。

 「現在、DHAの市場は400億円ほどありますが、ほとんどマグロとカツオの眼窩脂肪からできています。僕が発見しなくても他の誰かが見つけていたかもしれませんが、訳の分からない魚屋の話を取りあえず聞いたのがきっかけになりました。何にでも興味を持つようにしていたのが功を奏しましたね」

 矢澤さんは現在も研究生活に勤しみながら、月2回を目標にゴルフ場に足を運んでいる。

 「ゴルフはスポーツの中で最も認知症予防になる競技であるといわれています。それは仲間とコミュニケーションを取りながら、芝目を読み、風を読むという、脳をフルに使う競技だからです。打ちっ放しで何も考えずにひたすら打っても、何にもなりません。コースで考えながら回るからいいんです」

 取材の途中、矢澤さんは「これ、魚臭いよー」といいながら冷蔵庫から出したDHA入りのヨーグルトをわれわれに振る舞ってくれた。恐る恐る口にしたところ、まったく魚臭くないどころかおいしい。「冗談ですよ。でもここまでの味にするの大変だったんだから」と矢澤さん。

 研究室には企業と共同開発したサプリメントや、おやつなど機能性食品のサンプルがずらり。予防医学によって人を幸せにしたいという思いがひしひしと伝わる取材だった。


矢澤一良さん(やざわ・かずなが)
1948年生まれ、神奈川県出身。京都大学工学部工業化学科卒業後ヤクルト入社。以来、研究の傍ら書きためた論文が認められて89年、東京大学より農学博士号を授与される。東京水産大学(現東京海洋大学)大学院水産学研究科客員教授などを経て、2014年より現職。栄養に関するさまざまな学会、研究会に積極的に参加し、研究者と企業との橋渡しの役目を担っている。ゴルフは「40の手習いでやっと30年たちました。〝70代で70台〞が密かな目標。ドライバーショットでもっと飛ばしたい! いろいろ試しています。」

最近のゴルフの相棒はこのキャップ 同僚からの古希祝いのプレゼント 神奈川県に住んでいることから、静岡県のコースでのプレーが多いという矢澤さん。冬でも暖かいところが、静岡県内でのプレーが多くなる理由の一つだが、「基本的にはお声が掛かればどこへでも行きます!」。8月にはシニアツアーのプロアマ戦に出場し、熟練のワザを持つ選手たちとのプレーを楽しんだ。「シニアの選手とのプレーは、技術やパワーはもちろんですが、トークも楽しみですね」。そんな矢澤さんが最近のゴルフで必携しているのは、「同僚の先生が古希のお祝いにプレゼントしてくれた“Super70”と書いてあるキャップです」。古希の祝いだから紫色。Tシャツとセットで贈られたそうだ。


週刊パーゴルフ(2018年10月9日号)掲載 / 写真・鈴木健夫

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