【GOLF、今この人に聞きたい!】 第112回:阿井英二郎さん

 肉体的に卓越している点はもちろん、大谷選手のメンタルコントロール力はゴルファーにも役立つ部分が多いという。

 その一つが「働きかけの力」。大谷選手は、自分は運がよい、こんな両親で先生にも恵まれている、と事あるごとに口にする。つまり感謝の気持ちを表すということだが、大谷選手だけでなく、トップクラスの選手に共通する特徴だという。

 もう一つは「決断する力」。例えば、自分はPWで打ちたいが同伴者はパターで打てという状況で、悩んだ結果アドバイスに従ってパターを使ったら失敗した、という状況があるとする。

 「ここでパターを使えとアドバイスした人に対して責任を転嫁するような人は、結果が出ません。被害者意識があるからです。決断に自分自身で責任を取らなければ、同じ間違いを繰り返していくんです」

 確かに自分自身でも思い当たる節がある。ゴルフでは、ドライバーが悪い、ボールが飛ばない、雨が降って風が強い、同伴プレーヤーとリズムが合わない、キャディがグリーンを読むのが下手だなど、責任転嫁できる要素が満載である。

 「高校野球の監督をしていたときに、典型的な事例を経験しました」

 二人の生徒が夏の大会前に、阿井さんにバッティングを教えてほしいといってきた。一人は「やってみます」と素直に聞き入れ、朝早く来て自主練し、夕方練習が終わった後も黙々とバットを振っていた。しかし、夏の大会ではまったく打てなかった。すると彼は野球を辞めるといってきた。監督のいわれたとおりやったが、できなかったというのがその理由である。もう一人の生徒も同じように真面目に練習したが、やはり夏の大会で結果を出すことができなかった。しかし、彼は大学でまた野球をやりたいと話した。彼は阿井さんのアドバイスを受けたが、まったくそのまま受け入れたのではなく、最後の部分は自分で決めてやっていたからである。

 「はた目で見た行動はまったく同じですが、頭の中が正反対だったんですね。被害者意識がある限りは逃げにつながりますが、自分で決定すると自分で責任を取れますから、またチャレンジできるんですね。これはスポーツに限らず、すごく大事なことだと思います」

 大谷選手が二刀流にチャレンジし続けるように、自己責任で決定することを繰り返していけば、われわれへっぽこゴルファーでも上を目指し続けることができる、ということか。さて阿井さんは現在、筑波大学の大学院でコーチング、スポーツ心理学を勉強する学生の身。現役選手のころはコンペでドラコンを何度も取るほどの飛ばし屋だったが、肩、腰、ヒザのケガが重なったため、スムーズにクラブを振れなくなってしまったこともあり、現在は年に数回のエンジョイゴルフに徹している。それでもゴルフは大好きで、ヘッドコーチを辞めた年は、真夏に2日連続で2ラウンドしたほど、ゴルフを楽しんだ。

 「今活躍しているファイターズの選手を成長させる取り組みをしているうちに、もっと勉強したいと強く思うようになりました。メンタルの世界は、かなり研究が進んでいます。これからは日本の野球界だけでなくスポーツ界にもっと貢献していきたいですね」

 阿井さんのお話を伺っている中で、結果を出す人のメンタルコントロールの方法は、スポーツもビジネスもまったく同じだと理解した。ビジネスの世界は、いろんな外部要因があるためになかなか自分の考えたとおりに物事が進まない。そのため結果が出ないと、ついブレてしまうものである。しかし結果はすべて自己責任であるゴルフは、メンタルトレーニングの格好の実践の場である。ゴルフが上達すれば、仕事のスキルも上がるといわれるのは、これが理由であると思う。

阿井英二郎さん(あい・えいじろう)
1964年9月29日生まれ、茨城県出身。東農大二高時に、4番エースで甲子園に出場。ヤクルトスワローズにドラフト3位で入団。現役引退後に、日本大学文理学部で教員免許取得。つくば秀英高校と川越東高校で地理・歴史の教員として教鞭を振るい、また同校の野球部の監督も務める。その後、ヘッドコーチとして日本ハムに招かれる。現在は野球解説者と経営コンサルタント業を行いながら、筑波大学大学院でコーチング、スポーツ心理学を学ぶ。ゴルフのベストスコアは77。「70台が出たころは何回も出せたのですが、(ゴルフは)やり続けていないと好スコアが出ないスポーツですね。今は80台も出せません(笑)」という。

鷹巣南雄プロから頂いたドライバーは、恐れ多くて使えません 「現役時代に壊した首と肩がつくば秀英高校に赴任した後、悪化しまして、茨城で有名な整体院を紹介してもらったら、偶然、その院長が鷹巣南雄プロの甥っ子だったんです。しばらく通っているうちに、監督業を応援するといって、甥っ子経由で鷹巣プロから頂きました」

 ブランドはパワービルト。20年ほど前のモデルだが、大切に保管されているため、ほとんど新品同様。


週刊パーゴルフ(2018年7月3日号)掲載 / 写真・鈴木健夫

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