【GOLF、今この人に聞きたい!】 第112回:阿井英二郎さん

 「私のファイターズでの役割は、一軍選手に対する主にメンタル面のコーチングです。各選手に対して年に4回ほど面談をします。大谷選手もそうでしたけど、最初は全然話してくれませんでしたね。私が目指していたことは、今までのヘッドコーチ像と違いますから」

 この先の話を進めるために、ここで一度用語の定義をしておきたい。「指導」と呼ばれる行為には大きく分けて「ティーチング」と「コーチング」の2種類がある。ティーチングとは知識・スキルを有する者が、それを持っていない相手に授けること。一方のコーチングは相手の話を聞き、質問することで相手が自ら考えることを促し、それによって相手の自己実現や目標達成を図ることである。ティーチングの場合は相手が全面的に指導内容を受け入れることを前提としているため、上下関係が明確である。一方、コーチングにおいてはそれが十分に機能するためには、お互いが対等な立場で本音を言い合える関係にあることが理想である。

 野球のみならず他のスポーツにおいても、一般的に「コーチ」と呼ばれる人物は、この学問的な定義でのコーチングができる立場にない。一番の理由はコーチ自身が人事権への影響力を持っているためである。選手が、人事権に影響力を持つ相手に本音をいうのは相当勇気のいることである。

 「だから僕は人事に関してはまったく触れませんでした。でも選手はそんなこと知りませんから、最初は疑心暗鬼ですよね。1年ほどかかりましたね、あれ、この人信頼できて、話をしてもいいんじゃないかと思ってもらえるまでに」


 阿井さんから見ると、肉体や技術をコントロールすることには長けているプロ野球選手レベルであっても、メンタルをコントロールできるスキルを持っていることは少ないという。メンタルをコントロールするためにまず必要となるのは、自分を客観的に見たうえで、客観的に見ている自分と見られている自分を対話させることである。たとえていうと、自分自身が競馬の騎手であり、馬でもある状態をつくって、自分という馬の能力を高めて本番でそれを発揮させるというイメージだ。

 「大谷選手は最初からこれが上手でしたね。両親がつくった環境、高校時代の監督、本人の才能もあったと思います。でも、プロの世界に入って厳しい世界でも実践できるようになったことで、結果の出せる選手になったのだと思います」

 メジャーに行った最初のオープン戦のころは結果が出ず、米国のメディアからも酷評されていたのは皆さんもご存じのとおりである。しかし、大谷選手は打撃フォームを変えた。オープン戦では右足を上げて打っていたが、米国のピッチャーの変化球にそれでは対応できないと、すり足に変更した。阿井さんの分析によれば、それは大変なことである。例えばゴルフのスイングロボットの打ち方を変えようとしたら、各パーツの設定をすべて変更しなければならない。人間の場合は脳内での認識を修正して、神経を変えていかなければならない。

 「止まっている球を打つ一流のプロゴルファーでも、3カ月はかかると思います。普通の人だと1年、2年かけても、結果が出なかったり。でも、大谷選手は2週間程度でやってのけてしまうんです」

「真夏に2日連続2ラウンドするほどのゴルフ好きでしたが今は学生の身。少し控えています」

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