【GOLF、今この人に聞きたい!】 第85回:丹波幸一さん

 丹波さんが審判として駆け出しのころ、こんなことがあった。ある日の試合で盗塁に対してアウトの判定を受けた選手が不適切な抗議を口にしたため、退場処分を下した。試合終了後、フィールドを出ようと出入り口に向かうと、そこに敗戦チームの監督が仁王立ちしていた。

 「何だ、あの態度は、というので、態度の問題じゃないでしょ、って僕が答えたんです。そうしたら蹴りを入れてきたんですよ。即、退場処分を出しました。ゲーム終了後の退場は異例なんですけどね」

 その監督は現役時代はスーパースターで、そのうえみんなから恐れられていたためか、一度も退場処分を受けたことがない人物だった。

 「そんな仕事ですから、師匠を見つけて心の操作方法を学んだんですね。ゴルフにも応用できるところはたくさんあります」

 例えばミスのメカニズム。これは極度の緊張感と失敗を恐れる恐怖心であるという。その点では、ある意味ゴルファーはミスを鮮明に思い描くことができる。キャディが左OBだから気をつけるように、といえば、左にOBを打つイメージが4人全員の潜在意識の中に植えつけられ、それを意識するあまり、いろいろなミスが出る。

 「この場合、プレーヤーは左OBを確認したうえで、逆に右のバンカー方向に向かって打つとイメージすると、鮮明に潜在意識にイメージづけでき、ミスしない策となります」

 ただの言葉の問題だと軽く見てはいけない。考え方一つで、よい結果をもたらした経験を丹波さんは豊富に持っている。ツアーで1勝したもののシード権を失っていたプロゴルファーの例。彼は今年、結果が出なかったらツアー選手を辞める、と田舎の両親に話したといった。丹波さんは、それでは失敗して今年で辞めてしまうというイメージが自分に植えつけられることになる。だから、これまでになく練習しているから今年は最後にいい結果が出そうな気がする、と両親に話すようにアドバイスした。するとQTで好結果を残すことができたという。また、常にボーダーライン上にいる選手と話しているとカットラインのことしか考えていないように見える。しかし、試合に出るなら優勝スピーチの原稿を書くところから考えれば、試合の日までに何を準備すればよいのか、どうプレーを組み立てていけばよいか明確になり、結果は必ず違ってくるはずだ、と丹波さんは強調する。

 丹波さん自身は、社会人になってからしばらくは趣味としてゴルフをしていた。しかし、あるベテラン女子プロとラウンドしたときに、そのプロからもらったアドバイスがきっかけで、ティーチングプロの資格を持つレベルまで上達できた。そのプロは朝から体調が優れない様子だったが、前半1オーバー、後半1アンダーのパープレー。ラウンド後に丹波さんはどうしたらゴルフが上達するのかと尋ねると、練習したら誰でもうまくなるよ、と驚くほどシンプルな答えが返ってきた。それからは一日1000球打つのもザラ、一日で打ち放題を3回こなすほど打ち込んだ。

 ティーチングプロ資格を取ってからは、プロゴルファーと話す機会が増え、日本人プロの問題点もおぼろげながら見えてきた。丹波さんは韓国人と日本人の差は技術的な問題ではないと考えている。韓国出身のトッププロは現在でも、ジュニア時代から師事しているメンタルコーチから指導を受けているそうだ。

 「メンタルコントロールは日本のアスリートに一番欠けている部分だと思います。逆にいえば、ここが一番の伸びしろなんです」

 丹波さんの言葉はゴルフだけでなく、仕事や日常生活にも応用できそうだ。部下に意見をいうときにも「何でできないんだ」と叱るより、「こうしたらうまくいくんじゃないか」と成功のイメージを話したほうがよい結果が出る。他人の話を聞くときにも、好意的にとらえようと意識していれば、プラスに受け止められるものである。考え方一つで結果が変わるというのは本当だと思う。

丹波幸一さん(たんば・こういち)
1970年2月10日生まれ、兵庫県出身。京都産業大学卒。93年パシフィックリーグ関西審判部入局。日本シリーズ、オールスターゲームの審判など1700試合以上の審判を務め、現在審判員のクルーチーフ。ゴルフのベストスコアは69。ゴルフのプレーは職業柄、プロ野球のシーズンオフに集中するという。「シーズン中は月に1回行けるかどうかです。そのぶん、シーズンオフにはできる限り行くようにしています」

日本でわずか3人しかいないエイムポイントの指導資格の証書 エイムポイントの資格がどうしても取りたい、と創設者マイク・スウィニー氏に直接電話で問い合わせをした。すると近々日本に行く機会があるから、そこで指導しようとの話に。

 「世界中のトッププロが実践していますが、なぜだか日本人のトッププロは取り入れてくれませんね。今、指導しているジュニアや若手プロが、これからどんどん上にくると思いますよ」


週刊パーゴルフ(2017年11月21日号)掲載 / 写真・鈴木健夫

スペシャル最新記事一覧

Pargolf Members

すでに会員の方はこちら

最新トピックス


アクセスランキング

ツアー・トーナメント

フォトギャラリー

トーナメントプロ公式サイト・ブログ