プロ入り初年度の松山英樹が優勝したフジサンケイクラシック2013年大会では、日枝とともに、スピードスケートの岡崎朋美がプレゼンターを務めた
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石川遼や池田勇太らの人気に支えられてきた男子のプロゴルフトーナメントが、女子に圧倒されるようになったといわれて久しい。だが、前フジテレビ専務の稲木甲二は少し違った見方をした。
「トーナメントのテレビ視聴率を過去にさかのぼると、実は男子のほうが数字を取っています。ジャンボ尾崎や中嶋常幸の全盛期はデバイスがテレビしかなく、桁違いなので比較にはなりませんけど、石川遼が出てきたときの視聴率が13パーセント、11パーセントと2年連続で2桁を超えたし、松山英樹のときも9パーセントくらいいった。女子は宮里藍ちゃんが出場していたころが一番数字を取れていたけど、それでも2桁が1回だけ。6から7、8パーセントくらいまでいけばいいほうでした」
稲木は長年、フジサンケイクラシックとフジサンケイレディスクラシックの両方に携わり、この6月の人事異動で系列の仙台放送社長に就任したばかりだ。最近のトーナメント状況について、冷静にこう指摘した。
「近ごろ心配なのは、好調といわれている女子の人気まで落ちてきていること。確かにギャラリーは入っているかもしれませんけど、若い人をあまり見かけなくなっていますし、今のイ ボミらでは、さほど数字が取れなくなっています。女子の場合でも、視聴率は3~4パーセントで低空飛行。今はゴルフというスポーツイベントの端境期にあるのかもしれません」
テレビ局の番組制作において視聴率は命だといわれる。もとより高視聴率だと番組のスポンサーを獲得しやすくなるからだが、テレビ局自らがトーナメントの冠スポンサーになるのは別の話だ。なぜスポンサードしているのか。
「他にスポンサーがいないので、収支だけを見れば持ち出しです。しかし、トーナメントは単純に金儲(もう)けのためでなく、局のイメージづくりという側面があります。僕たちは物を売る手段として、トーナメントを使うという発想はありません」
稲木はそう答えた。平たくいえば、スポーツイベントを主催するメリットは、有名選手を自局の他番組で起用できるからなのだろう。
「特にオリンピックのときとか、スポーツ選手が番組に出ると視聴者の反応がいい。テレビ局はあくまでソフト産業なので、有名人と寄り添っていかなければならない業態です。ゴルフに限らず、サッカー、水泳、フィギュアスケート、いろんなスポーツ選手と近いですが、ゴルフでいえば、40年以上もトーナメントを続けているという業界に対する信頼感があるのだと思います。40年やっているところと3年しかやっていない企業で、LPGAが選手のグリップ力においてみんな平等にするのはおかしい、という主張もします」