あの頃ボクは若かった 昭和の履歴書 vol.16 -渡辺司-

父への恩返しはいつの間にかできていた

「18歳からゴルフを始めて40年間、ゴルフを極めようと思ったことはない。ゴルフをうまくやると何かが手に入る、ということがずっとモチベーションになってきた」というのが渡辺のゴルフ哲学だ。確かにプロゴルファーは試合で上位に入れば大きく稼げるが、稼げなければ経費分、赤字になるという商売だ。「だから試合は仕事というよりもギャンブルなんです。うまくいけば持って帰れるけど、ヘタを打てば赤字になる。上位に入らなければ貧乏になっちゃう、ということを意識してめっちゃ練習しました」。気がつけばシード選手になっていた。

 ツアー2勝の実績を経て、シニア入り後も活躍を続けている中で、しみじみ感じていることがある。「東ノ宮の1年がなければ、今の僕は絶対にない。それは青木さんに頼んでくれた父とゴルフ漬けにしてくれた青木さんのおかげだと思っています。ゴルフって教わる人と環境が本当に大事。僕はここまで、遠い将来ではなく目の前だけを見てやってきた。そうしているとありがたいことに、いっぱいいろいろなことがついてきた。ゴルフは僕にとって100パーセント仕事なんです」。だから、今でも青木の手伝いなら何でもする心構えを持っている。それが恩返しだと肝に銘じているからだろう。

 プロゴルファーになる夢を託した息子がそれをかなえ、父が喜んだのはいうまでもない。その父が亡くなる少し前の話が面白い。息子がプロになって稼げるようになったころ、父は新聞記者の仕事を辞めた。「俺はもう遊んで暮らす」。そう宣言した父に「金はどうするんだ?」と尋ねると、「おまえが稼ぐんだ」という言葉が返ってきた。節税のためという理由で会社を設立し、その代表となった父には役員報酬を払い続けてきた。父は「おまえのために取っておくから」と口にしていた。時が流れ息子が「ところで、通帳見せてくれる? もう随分たまっただろう?」と尋ねると、そこに残金はなかった。息子は父が貯金してくれていると思っていたが、父はきれいに使ってしまっていたのだ。「まったくもう。遊んで暮らして」とブツブツいいながら、息子の目は優しい。いつの間にか息子の恩返しは、想像以上の大きな形になっていたようだ。
1984年
QTで上位に入り試合に出られるようになった
この年5勝の前田が初の賞金王
同年の男子賞金ランキング
1 前田新作 57,040,357円 
2 尾崎直道 53,717,214円
3 尾崎健夫 43,846,788円
4 新井規矩雄 42,449,869円
5 中村 通 41,543,634円
6 倉本昌弘 41,252,311円
7 中島常幸 40,145,992円
8 青木 功 36,851,411円
9 藤木三郎 35,464,238円
10 井上幸一 30,105,239円

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