取材の現場から

選手とメディアの関係の在り方は、米PGAツアーも変化の時期か!?

 テニスの大坂なおみ選手が全仏オープンで記者会見を拒否したことから、メディアと選手のかかわりが話題となっている。

 メジャーリーグやNBAなどのチームスポーツを中心に、米国のプロスポーツ界には、テニスと同じようにメディア対応が義務づけられているが、ゴルフ界にはそのルールはない。例えば米PGAツアーは、

「ツアーと選手は個人契約で、ツアーに強制力はない」

 といい、会見を拒否したところで罰金を科せられることはない。

 メジャーでは多くの選手が事前に会見場に呼ばれる。通常の試合でも、優勝者は試合後に会見場に呼ばれるし、負けた選手も会見場かクイッククオート(ミックスゾーンとも呼ばれる)での対応が求められる。ほとんどの選手はリクエストに応じて取材を受けるが、拒否することもまれにある。タイガー・ウッズのような人気選手ともなれば、どんなに成績が悪くても毎日ラウンド後にコメントを求められる。

 ウッズも、プレー内容によっては無言でコースを立ち去ることはあった。そういう日は、「プレー内容に怒り心頭でメディアと話す気にもならないのだろうから仕方ない」と、われわれも諦めるしかない。翌日にはけろっとした顔で穏やかに話したり、最終日にはきちんと対応しているのが通常だ。

 ずいぶん昔だが、NBAのスーパースター、マイケル・ジョーダンがバスケットを一度引退し、メジャーリーグの2Aでプレーした時期に取材したことがある。ある日の試合後、地元紙の記者がジョーダンに「なぜ背番号が45番なのか」と質問した。スポーツ記者であれば誰もが知るが、ジョーダンは「憧れの兄が昔つけていた番号」と丁寧に説明していた。そんなジョーダンも、宿舎を抜け出しカジノへと繰り出したことを記事にされると、チーム全体で会見を数日間拒否したことがある。その後、

「ボクにも経験があるから分かるが、カメラや記者の向こうにはファンがいると思って話さないといけない。テレビや新聞がスポーツを報じるから大会にスポンサーがついている」

 と語っている。

 米PGAツアーでは今年から“プレーヤーインパクトプログラム”という制度が実施されている。これは選手のコース外での活動で米PGAツアーの人気に貢献した選手10人に対し総額4000万ドルのボーナスを支給するというもの。メディア対応をはじめ人気選手には負担が大きいことへの報奨の意味もある。選手もメディア対応をプロスポーツの仕事の一部として、それに対する報酬があれば納得できるだろう。

 SNSが発達し、選手が自身の言葉で発信することが当たり前となった。メディアの在り方も変わっていくのだろう。

文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2021年6月22・29日合併号)掲載


武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。
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