ファーマーズインシュランスオープンの3日目、トップを走るパトリック・リードが10番ホールで深いラフに入ったボールを拾い上げたのだが、この措置が話題となった。
前日、大雨に見舞われたコースは地盤がとても軟らかかった。リードはボールを拾い上げる前に、ボランティアと同伴競技者にボールが跳ねたのを見たかと尋ね、見ていないことを確認して、ボールを拾った。
ルール上、自身のボールが作ったピッチマークに埋まったボールは、無罰で救済を受けることができる。2019年のルール改正で、フェアウェイ以外のジェネラルエリアでも採用されることになった。ボールが跳ねずに止まっていれば自分のピッチマークに埋まった可能性は高いが、もしバウンドしていれば、その可能性は低くなる。
リードはボールを拾い上げてから競技委員を呼んだのだが、「なぜ、ボールを先に拾ったのか」と視聴者は騒然、さらにテレビ映像でボールが跳ねていることが確認されると、たちまちSNSが炎上した。しかし最終的に競技委員は、正しい処置として無罰での救済を支持した。
実はこの日、ローリー・マキロイも同様の処置を18番で行っていた。マキロイもボランティアと同伴競技者に確認し、こちらは競技委員を呼ばずに自身で救済措置を取った。しかし、疑惑の目はリードだけに向けられた。
リードは学生時代、スコア改ざんやチームメイトのモノを盗んだといううわさが絶えなかった。これが事実かどうかは不明だが、直近では19年のヒーローワールドチャレンジ3日目、ウェイストエリアで素振りをする際にボール後ろの砂を削ってライを改善したことがテレビで放映され、ペナルティを負っている。「気づかなかった」と主張するリードには、多くのゴルフファンが不信感を持った。
実はマキロイのボールも映像でバウンドが確認されたが、週明けになってボランティアが誤って踏んだことが発覚した。マキロイは昨年8月の全米プロゴルフ選手権で、やはりボランティアに踏まれたボールの救済を受ける際に、「本来よりライがよすぎる」と、わざわざ悪いライへドロップしたこともあった。
最終的にリードが優勝したことも騒ぎが大きくなった理由だ。「3日目の救済がなければ、どうなっていたか分からない」と、ブックメーカーは素早く賭け金をすべて払い戻した。
最終的にボールが本当にピッチマークに入っていたかどうかは誰にも分からないが、今やテレビカメラのみならず、ギャラリーの多くもカメラを持っている時代だ。
「ボクは正しい処置をした」
と悪びれないリードだが、不審な行動は慎むことが最大の防御である。
文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2021年3月2日号)掲載
武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。
前日、大雨に見舞われたコースは地盤がとても軟らかかった。リードはボールを拾い上げる前に、ボランティアと同伴競技者にボールが跳ねたのを見たかと尋ね、見ていないことを確認して、ボールを拾った。
ルール上、自身のボールが作ったピッチマークに埋まったボールは、無罰で救済を受けることができる。2019年のルール改正で、フェアウェイ以外のジェネラルエリアでも採用されることになった。ボールが跳ねずに止まっていれば自分のピッチマークに埋まった可能性は高いが、もしバウンドしていれば、その可能性は低くなる。
リードはボールを拾い上げてから競技委員を呼んだのだが、「なぜ、ボールを先に拾ったのか」と視聴者は騒然、さらにテレビ映像でボールが跳ねていることが確認されると、たちまちSNSが炎上した。しかし最終的に競技委員は、正しい処置として無罰での救済を支持した。
実はこの日、ローリー・マキロイも同様の処置を18番で行っていた。マキロイもボランティアと同伴競技者に確認し、こちらは競技委員を呼ばずに自身で救済措置を取った。しかし、疑惑の目はリードだけに向けられた。
リードは学生時代、スコア改ざんやチームメイトのモノを盗んだといううわさが絶えなかった。これが事実かどうかは不明だが、直近では19年のヒーローワールドチャレンジ3日目、ウェイストエリアで素振りをする際にボール後ろの砂を削ってライを改善したことがテレビで放映され、ペナルティを負っている。「気づかなかった」と主張するリードには、多くのゴルフファンが不信感を持った。
実はマキロイのボールも映像でバウンドが確認されたが、週明けになってボランティアが誤って踏んだことが発覚した。マキロイは昨年8月の全米プロゴルフ選手権で、やはりボランティアに踏まれたボールの救済を受ける際に、「本来よりライがよすぎる」と、わざわざ悪いライへドロップしたこともあった。
最終的にリードが優勝したことも騒ぎが大きくなった理由だ。「3日目の救済がなければ、どうなっていたか分からない」と、ブックメーカーは素早く賭け金をすべて払い戻した。
最終的にボールが本当にピッチマークに入っていたかどうかは誰にも分からないが、今やテレビカメラのみならず、ギャラリーの多くもカメラを持っている時代だ。
「ボクは正しい処置をした」
と悪びれないリードだが、不審な行動は慎むことが最大の防御である。
文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2021年3月2日号)掲載

大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。