米LPGAツアーの2020年シーズンは、例年よりも約1カ月遅れて終わった。
日本人でただ一人、最終戦に出場した畑岡奈紗は、ツアー4年目のシーズン、12試合に出場して予選落ちなし、賞金ランキング5位という結果だった。惜しまれるのは、日本女子ツアーの2試合を含め未勝利だったこと。1月の開幕戦から2試合連続で2位タイ、2位と優勝争いをする絶好のスタートを切り、メジャータイトルはKPMG全米女子プロ選手権で3位タイに入ったものの、手が届かなかった。
「スタートがよかったので、もう少し試合数があれば勝つチャンスはあったのかなとも思います。あと一歩届かなくて、優勝できなかったのは残念」
2月、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けツアーは中断。畑岡は米国本土での再開に備え一度渡米したが、先が見えない状況に再び日本へ帰国。それから約5カ月を茨城県の自宅で過ごした。
「自宅にトレーニングルームを作って、バイクやベンチプレス、デッドリフトでトレーニングしました。シーズン中にはなかなか上半身を鍛えることができないので、集中的にやりました。特に、ベンチプレスは上半身だけの力で挙げるから、コアもしっかりしていないと挙げられません」
自主トレに加え、トレーナーに自宅まで来てもらうことで、ベンチプレスでは100キロを挙げられるようになった。
その成果は、まず飛距離となって表れた。例年4月開催のANAインスピレーションが9月に延期となり例年とは条件が違ったものの、最終日には18番パー4で、残り207ヤードを5番アイアンでピン奥につけられるほどになっていた。
20年の畑岡は、米LPGAツアーをとても楽しめるようになったようだ。ツアーメンバーに同い年の河本結が加わったり、キャディとコース上で良好なコミュニケーションが取れていることもあり、これまでより笑顔がずっと多くなった。19年に渋野日向子がAIG全英女子オープンで優勝したことを、「(メジャー優勝を)先を越されて悔しかった」と正直に口にするなど、報道陣に対してもいろいろなことを話すようになった。
21年は東京五輪への出場を懸けての戦いでもある。現在ロレックス女子世界ランキング7位の畑岡は日本人選手最上位につけている。出場権が確定するまではまだ半年あり、日本女子ツアーは年々4日間大会が増え、獲得できるポイントが増えている。決して安泰ではない。
「米LPGAツアーで1位を取るという気持ちで戦いたい。日本人の中でということは、あまり考えないようにしています」
21年の米LPGAツアーは1月21日に開幕する。畑岡の新たな戦いが始まる。
文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2021年1月19・26日合併号)掲載
武川玲子(たけかわ・れいこ)
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。
日本人でただ一人、最終戦に出場した畑岡奈紗は、ツアー4年目のシーズン、12試合に出場して予選落ちなし、賞金ランキング5位という結果だった。惜しまれるのは、日本女子ツアーの2試合を含め未勝利だったこと。1月の開幕戦から2試合連続で2位タイ、2位と優勝争いをする絶好のスタートを切り、メジャータイトルはKPMG全米女子プロ選手権で3位タイに入ったものの、手が届かなかった。
「スタートがよかったので、もう少し試合数があれば勝つチャンスはあったのかなとも思います。あと一歩届かなくて、優勝できなかったのは残念」
2月、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けツアーは中断。畑岡は米国本土での再開に備え一度渡米したが、先が見えない状況に再び日本へ帰国。それから約5カ月を茨城県の自宅で過ごした。
「自宅にトレーニングルームを作って、バイクやベンチプレス、デッドリフトでトレーニングしました。シーズン中にはなかなか上半身を鍛えることができないので、集中的にやりました。特に、ベンチプレスは上半身だけの力で挙げるから、コアもしっかりしていないと挙げられません」
自主トレに加え、トレーナーに自宅まで来てもらうことで、ベンチプレスでは100キロを挙げられるようになった。
その成果は、まず飛距離となって表れた。例年4月開催のANAインスピレーションが9月に延期となり例年とは条件が違ったものの、最終日には18番パー4で、残り207ヤードを5番アイアンでピン奥につけられるほどになっていた。
20年の畑岡は、米LPGAツアーをとても楽しめるようになったようだ。ツアーメンバーに同い年の河本結が加わったり、キャディとコース上で良好なコミュニケーションが取れていることもあり、これまでより笑顔がずっと多くなった。19年に渋野日向子がAIG全英女子オープンで優勝したことを、「(メジャー優勝を)先を越されて悔しかった」と正直に口にするなど、報道陣に対してもいろいろなことを話すようになった。
21年は東京五輪への出場を懸けての戦いでもある。現在ロレックス女子世界ランキング7位の畑岡は日本人選手最上位につけている。出場権が確定するまではまだ半年あり、日本女子ツアーは年々4日間大会が増え、獲得できるポイントが増えている。決して安泰ではない。
「米LPGAツアーで1位を取るという気持ちで戦いたい。日本人の中でということは、あまり考えないようにしています」
21年の米LPGAツアーは1月21日に開幕する。畑岡の新たな戦いが始まる。
文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2021年1月19・26日合併号)掲載

大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。