取材の現場から

「ゴルフという言葉を聞くだけで嫌」 失意のどん底から今季5勝目へ…鈴木愛を立ち直らせた“空白の時間”

<樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント 最終日◇3日◇武蔵丘ゴルフコース(埼玉県)◇6585ヤード・パー72>

「ここまでゴルフが嫌いになったことはなかったです」。そんな苦しい時間を乗り越えて、鈴木愛が今季5勝目を手にした。2位の申ジエ(韓国)とわずか1打差のトータル14アンダー。実力者同士の緊迫感あふれる優勝争いを、最後に制した。

1打差の単独トップで迎えた最終日。「アイアンの調子がよくて、いいラインにつけることができました」と、前半からスコアを伸ばした。3番で8m、4番で6mと立て続けに長いバーディパットにトライしたが、「距離はあったけど入るポジションにつけることができました」と、これを立て続けにねじ込んだ。その後も6番で1つ伸ばし、前半を終えた時点では2位に3打差をつけ快走した。

しかし、バックナインに入ると、息を潜めていたジエが10番から13番までの3バーディで伸ばし始める。鈴木も13番のバーディで応戦したが、15番パー3で1.5mのパーパットを外しこの日唯一のボギーを喫した。これで、ここをバーディとしたジエとの差が再び1打に。そして、この後は緊迫した時間を過ごすことになった。

16番パー5では、ジエが3打目を70cmにつけるスーパーショットからバーディをゲット。しかし鈴木も1.5mのチャンスをしっかりと決め、派手なガッツポーズを見せた。続く17番で、またしても1.5mを沈めるナイスパーセーブ。最終18番でも、決めれば優勝という3mほどのバーディパットが1mオーバーするピンチとなった。「ジャストタッチだったのに、あんなに行くとは…。『うわ~、最悪』という気分でした」。1打差のジエがパーで上がり、後は外せばプレーオフという鈴木の“しびれるパーパット”を残すのみ。緊張感に包まれるなか、これを流し込むと、ホッとしたような表情で空を見上げた。

先週の「NOBUTA GROUP マスターズGCレディース」で復帰するまで、左親指の炎症で「日本女子オープン」など4試合を欠場。この期間は「ゴルフをやるのも嫌。試合を見るのも、“ゴルフ”という言葉を聞くだけで嫌だった」という苦しみのなかにいた。これは、欠場前に出場したホステス大会「デサントレディース東海クラシック」などで、思ったようにパターが打てず、“練習する意味があるのか”という自問自答を重ねるなかで至った気持ちだった。

この4週の間には、「一人になりたい」と普段東京で一緒に暮らしている母、弟と離れ初めての一人暮らしを2週間ほど経験。「料理を作って、洗濯をして…ゴルフをしない生活ってこういう感じなんだと思ってました。『普通の生活って楽しいな』って。すごく幸せな時間でした」。さらに、スポンサーや友人らに、思いを伝えることで、徐々に気持ちも落ち着きを見せた。どん底のなかこのリフレッシュが効いた。そして、「マスターズで復帰する時には、“すっごくゴルフをやりたくない”というのが“ちょっとやりたい”になってました(笑)」と、再び前向きな気持ちが戻った。

復帰2試合目で、開幕前に掲げていた年間5勝を達成。「ケガから戻ってすぐに勝てたことが自信になりました」。すっかりその顔には笑顔が戻った。さらにこの勝利で、開幕前に「あきらめていません」と話していた賞金女王への望みもつないだ。賞金1440万円を獲得し、通算獲得額は約1億188万円(ランク3位)に。ランクトップのジエが単独2位だったため、その差はまだ約3000万円あるが、「チャンスが出てきた」と再び背中が見えてきた。

「残り4試合で3000万円は簡単ではない。でも、この後1回は勝つチャンスが来ると思う。きょう回ってジエさんも調子がよさそうですし、また差は開くかもしれないけど、あきらめずに最後までいきたいです」。苦しい時間を乗り越えた鈴木愛が、気力十分で勝負の4連戦に挑んでいく。(文・間宮輝憲)

記事提供:ALBA.Net(GGMグループ)

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