取材の現場から

日本女子アマで起きた前代未聞のクラブ破損事件 山中専務理事一人に責任を押し付けられてしまうのか!?

前代未聞の不祥事に、日本ゴルフ協会(JGA)はどう決着をつけるのか。日本女子アマチュアゴルフ選手権最終日、最終組で優勝争いを演じていた古江彩佳選手のクラブを、山中博史JGA専務理事が運転するカートが追い越しざまに折ってしまった事件である。

「好きなクラブ」を折られて涙し、ビッグタイトルを逃した古江だが、翌週のステップ・アップ・ツアーに出場し、2位タイと大健闘した。悪夢のような事件を乗り越え、大きく羽ばたいてほしいところだが、“大人たち”に関しては、このままでは済まされるはずもない。

起きてしまった不祥事にどう対応するか。大事なのは事実の公開とその後の対応。さらに今後への対策だ。

▼何事もなかったように

今回は、山中専務理事によれば「(クラブ破損に)気づいたのがグリーンに到着した後」だったため、後から古江本人に山中専務理事が謝罪。翌日、JGAホームページ上でも同氏名で、2日後にはJGA名で、謝罪と今後適切な対処をする旨がホームページに掲載された。誰が、どんな形で、いつ、適切な対処をするのか。

「倫理委員会が書面決議中です。結果を待って倫理委員長から会長に具申されて理事会審議となります」と、JGA広報。ただし、JGAの理事、委員の大半は常駐ではない上、全国に散らばっている。そのため、倫理委員会も理事会もすぐに開催できず、いずれも書面での審議となる。

「理事会は3月、6月、12月開催と決まっていますが、それを待っていられる話ではありません。時期的なことは明言できませんが、早急に」(同前)とのこと。山中専務理事の処分は、この過程を経て決定される。

JGA名での文面に「事故の詳細を調査するとともに、再発防止策、およびカートを運転していた山中博史専務理事の処分について協議し~(以下略)」とある。けれども、山中専務理事一人を処分して済む問題なのだろうか。取材の過程で浮かび上がってきたのは、JGAが組織として抱える大きな問題点だ。

確かに、実際にカートのハンドルを握っていてクラブを破損したのは山中専務理事。謝罪文にも「100%私の不注意によるミス。(中略)謝って解決する問題ではないことは重々わかっていますが(攻略)」とある。同氏が、この先、なんらかの処分を受けることにもなるのは当然の帰結だ。

組織としてはどうするのか。気になるのが、カートに同乗しており、まさにその現場にいた組織の長である竹田恒正JGA会長の対応だ。10番のセカンド地点で最終組のカートを追い越してクラブを折ったままカートはグリーンに向かった。ここで、ショックで泣いている古江に対して、遅まきながら山中専務理事が謝罪したのは前述のとおり。このとき、竹田会長はどうしていたのか。カートから降りてくることすらしなかったという証言が複数ある。「何事もなかったかのように」「知らんぷりしているみたいだった」という印象を、その場にいた人たちに与えている。

驚いたことに、表彰式でも、まったくクラブ破損の事実については触れず、何事もなかったように挨拶した。晴れの表彰式であっても、大会の行方を左右したかもしれない大きな出来事に触れないのは不自然だ。組織の長としてここで公式に一言謝罪するのは当たり前のことだろう。最近、挨拶といえば判で押したように話しているナショナルチームに対する自画自賛と、それを支えるための寄付のお願いで終わってしまったという。その場にいた選手たちや関係者の不信感はさらに募った。

▼謝罪文に会長の名前なし

古江本人がインスタグラム上で公開した、折られた3Wの写真
古江本人がインスタグラム上で公開した、折られた3Wの写真
まだある。7月1日付の組織としての謝罪文にも、会長の名前はない。このままでは、現場にいて、まともな対処もしなかったリーダーが、最終的に処分を下すということになってしまう。組織の長として何らかの対処はして当然のところ、現場にいたにもかかわらず、最悪の印象を残してしまっている。

竹田会長の一連の対応についての本誌の質問に対して、JGAから返ってきたのはこんな答えだ。

「現在、今回の一連の事実確認、再発防止などをまとめるよう会長から指示が出ております。それらを明らかにしたうえで、JGAホームページ上で、なるべく早急にお知らせしますので、今しばらくお待ちいただきたい」

会長が指示をするのは当たり前だが、自分が矢面に立つ気はないのだろうか、という疑問が残る返答だ。

組織としての問題点も、改めて浮き彫りになった。JGA理事や委員たちの多くは専従ではなく、全国に散らばっている。会議だけなら、今日、メンバーの居所が世界中であろうとも行えるが、本業など他のことにに忙殺されていてはそうはいかない。JGAの仕事が最優先ではないのが当たり前という状況で、責任の所在があやふやなのだ。

JGAに限らず、日本のスポーツ団体の中には同様のところが少なくないが、これがことをやややこしくしている。専従でなくフットワークのよくない人々の権限ばかりが大きく、専従で実務に当たる事務局の権限が小さいから、現場の意見がなかなか伝わらず、物事がスピーディに進まない。何もかも後手後手になるのはそのためだ。この仕組みを改めない限り、日本のゴルフを引っ張っていく上でのさまざまな不都合が常に起こってくる。

自ら「日本のゴルフを代表する団体」(JGAホームページより)を標榜する五輪ゴルフ競技のNF(ナショナルフェデレーション)である以上、組織としてもっと機能することを考えなくてはならない。

女子アマ最高峰の舞台で起こった最悪の事件を二度と起こさないためには、それを認め、きちんとした対応をする必要がある。会長も含めて当事者の責任をきちんと問い、組織としての問題点を改善しなければ、そこから先には進めない。決して山中専務理事一人に対して、トカゲのしっぽを切るような処置だけで済ませてはならない。

(ゴルフジャーナリスト・小川淳子)
※2019年7月23・30日号号「芝目八目」より

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