取材の現場から

【ゴルフノチカラ】 18歳でプロ転向して米ツアー転戦中!山口すず夏

「とにかく東京オリンピック(五輪)に出たいんです」。その願いを達成するために18歳の山口すず夏が、米国でツアーを転戦中だ。今できること、目の前だけを見つめながら、無限大に広がる〝希望〟に向けて、ただただ走り続けている。

3月の南カリフォルニアは、西海岸らしい海からの少し冷たくも、心地よい風がコースに吹いていた。サンディエゴ郊外、カールスバッドの街は世界の主要ゴルフメーカーが本拠地を置くゴルフのメッカだ。

米LPGAツアー、2019年シーズンのアメリカ本土の3戦目、起亜クラシックの舞台は、故アーノルド・パーマーがデザインしたアビアラGC。今季ルーキーとして戦っているプロ1年生の山口すず夏は、早朝からの練習ラウンドでコースチェックに余念がなかった。それは2日後のマンデーを勝ち抜き本戦出場の資格を得るためで、芝目のきつい難グリーンを丁寧に確認していた。

「マンデートーナメントは60人出場して、通るのは二人だけなんですよ。今年は(米国と欧州が戦う)ソルハイムカップもあって、上位選手がポイントを稼ぎたいから、例年よりもたくさん上が出ていて……。だから私の番まで下りてこない。でも、この試合は私にとってすごく大事なんです」

その言葉とは裏腹に、山口の声は明るくはつらつとしていた。さすが18歳だなあと、妙に感心してしまった瞬間だった。

昨秋、山口はプロ転向を決意した。その理由はこれまで大きく報道されてきたように、来年東京で開催されるオリンピック(五輪)に出場するためだ。そのために細部に至るまですべてを計画し、今は一歩ずつ進んでいる最中だ。
中学3年の2016年Tポイントレディスでベストアマを獲得した山口。初日は首位発進だった
中学3年の2016年Tポイントレディスでベストアマを獲得した山口。初日は首位発進だった
東京五輪に出場できるのは男女とも各60人。世界ランキングを基に、各国の上位二人(ランキング15位までは最大4人まで可)が選出される。つまり世界ランキングで日本勢の上位二人、もしくは15位以内に入ることが必要となる。

それはプロ転向せずアマチュアでも可能なのだが、世界ランキングを決めるのは世界で開催されている主要ツアーでの成績が軸となるから、現実的にはプロになってトーナメントに出場し、そしてポイントを獲得しなければならない。現在(4月15日)の山口の世界ランキングは453位。日本勢上位は5位の畑岡奈紗、26位の鈴木愛だから山口の目標ははるかかなたともいえる。

しかし五輪出場を決めるのは20年6月末、それまで1年以上の時間が残されている。

「昔からずっと五輪に出たいと思っていたけれど、開催が東京と決まったときには『絶対に出たい』と思ったんです。日本でプロになるという選択肢もあったけどプロテストが今年の8月、実際にツアーに出られるのは来年だからそれじゃあ、全然間に合わない。でも高得点が得られる米ツアーに参戦してポイントを積み重ねていけば、まだ不可能じゃない。ならそこを目指したい」と決意した。

そこまで五輪にこだわるのは、スポーツ好きの一家で育った山口だからこそなのかもしれない。

「私がゴルフを始めたころ、ゴルフは五輪種目じゃなかった。でも五輪はどんな種目でもずっと子供のころから見ていた。いろいろなスポーツがあっても、五輪はやっぱりみんなが注目して見るじゃないですか。そうすると自分もやっぱりゴルフを始めて、こういう舞台でプレーしたい、そう思うようになったんです。それに金メダルがもらえるのは五輪しかない。普通のゴルフトーナメントはトロフィーだから。メダルをもらいたいんです。かっこいい!」

こうして、山口の長い旅は始まった。