84年前、ゴルフ場の利用税に抗議してコースを閉鎖した人がいた

川奈ホテルゴルフコースでは毎年、フジサンケイレディスクラシックが開催されているが、もし戦前にゴルファーへの課税に抗議して閉場されたままだったらここでの大会もなかった
川奈ホテルゴルフコースでは毎年、フジサンケイレディスクラシックが開催されているが、もし戦前にゴルファーへの課税に抗議して閉場されたままだったらここでの大会もなかった 【拡大】
この時期になると、次年度の税制改正を議論する自民党税制調査会が行われ、〈ゴルフ場利用税〉撤廃を訴えているゴルフ関係者は、毎年その結論にがっかりさせられている。ゴルフ場は、法人税や固定資産税などをしっかりと毎年納めている。そこにさらにゴルフというスポーツをする人にゴルフ場利用税を課すことは、まったくのナンセンス。しかし、先日の税制調査会の結論は昨年までと変わらない「継続的に検討する」というもの。ゴルフ界の主張は今回も認められなかった。

国を挙げて外国人観光客の増加を目指している中、アジア圏のゴルファーを中心に来日してプレーを楽しむ人も増えている。この日本特有の税制に何と説明すれば納得してもらえるのだろうか。だれもが納得しないまま、「日本は不思議な国だ」と思いつつ仕方なく払っていることだろう。

実は85年前の1933(昭和8)年、静岡県がゴルファー一人当たり1円の税を課そうとしたことがあった。現在のゴルフ場利用税とまったく同じだ。高いプレー代を払えるゴルファーならば税を徴収しても払えるだろうという理論だった。当時、静岡県内のゴルフ場は川奈ゴルフコース(現在の川奈ホテルゴルフコース大島コース)のみ。つまり、静岡県の課税案は川奈に対してのものといってよかった。

その話を聞いたオーナーの大倉喜七郎は激怒。サラリーマン階級の疲労回復にはゴルフが絶好と信じて始めたものであり、スポーツに課税するとは許しがたい。これからホテルともう一つのコース(富士コース)ができることで世界的なリゾート地となり、観光客が来れば国の収入も増えるはずだと息巻いた。大倉は戦前の大倉財閥の2代目総帥としてホテルオークラ、上高地帝国ホテルなど日本のホテル業の発展に貢献した人物だが、ゴルフ狂いというわけではなく、川奈にリゾートホテルの理想郷を求めていたにすぎない。事実、赤字はポケットマネーで補填して、維持していたという。

それだけの想いを込めたコースに対して、一方的な課税だ。大倉はメンバーシップコースではなくパブリックコースであることをこれ幸いと、翌年2月下旬に「お別れトーナメント」を開催すると、自らの判断で課税案への抗議のためにコースを閉場してしまった。

大倉は後年、「ばかばかしい話」といいながら、静岡県にはゴルフ場から年間十数万円が落ちていたのに、入場者に課税しても年間3000円程度にしかならないことを打ち明けているが、それが真実とすれば静岡県の課税判断は愚策だったといえよう。当時の静岡県知事は大倉の対抗措置に、いきなり閉場するのは政策の趣旨を妨げることだと反論したが、大倉はまったく聞く耳を持たなかった。

程なくして、有力なゴルファーたちから閉場を惜しむ声が大倉に伝えられたことで、コースは7月中旬に再開し、その後、ホテルと富士コースが完成して世界的なリゾートコースとして広まっていった。

2018年に話を戻そう。お役所の考えは昔と一向に変わっていない。変わっているのは、ゴルフ場側が閉場という強硬手段が取れないことだ。国会議員の中にも撤廃派は一定数おり、その方たちを先頭に撤廃運動を継続しているが、ゴルフ界はこれ以上打つ手がないというのが実情だ。

大倉喜七郎ならば、どうするだろうか?

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